イゼルローン回廊外遭遇戦
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隊1500隻を置き去りにして、急速に前進しつつ、左回りに迂回して頂きたい」
「旗艦を含む半個艦隊を置き去りに!?」
フィッシャーは驚いたように叫ぶ。
「リシャール少尉!」
そこで参謀の一人がまた声を上げたのだが、意外にもそれを制したのはパストーレ准将であった。准将も、この若者ならなんとかするのではないか、と考えていたのだ。
「今ここで右舷に回頭しても間に合いません。むしろ前の半個艦隊と後ろの半個艦隊を故意に分け、間隙を作ることで、敵艦隊をそこに誘導します。前の半個艦隊は左回りに迂回して敵の側面を突いて下さい。旗艦を含む後ろの半個艦隊は、まず急速に後ろ向きに下がり、目の前を敵艦隊が通過したのち、敵の後方に食らいつきます」
「つまり艦隊を二つに分けた上で、敵の右舷と後方より時間差で挟撃を仕掛ける、と?」
「はい。敵は元々我が艦隊をその熾烈で高速な攻撃によって分断することが目的です。ならばそれを逆手にとってしまえばよろしい。敵は死に物狂いで来るでしょう。だからこそ、一度いなされてしまえば対応はできない。フィッシャー中佐、半個艦隊の指揮をお願いします」
「で、ですが……」
「フィッシャー中佐は艦隊運動の達人と伺っています。大丈夫でしょう」
「……わかりました。それではこれよりは半個艦隊を持って急速前進、左回り側撃を加えます」
フィッシャーはそう言って、半ば感嘆の眼差しで、少尉に向かって敬礼した。彼はこれが司令部の発案ではなく、この若き少尉の発案だと気付いていたのである。
フロル・リシャール少尉もまた、見事に敬礼をした。
そしてこの作戦は見事に成功したのである。
この時期において既に名人芸に達していたフィッシャーの艦隊運動は、まさに見事の一言に尽きた。その芸術的艦隊運用は、一艦の脱落もなく、戦場での左回り側撃を可能にしたのである。フロルもまた、司令部を無理矢理動かし、後ろ半個艦隊の急速後退を指示した。フロルの指示はすべて司令部の命令と各艦長は思っていたし、そうではないと気付いた者も、生き残る為に全速後退をしたのである。
同日8時2分、敵艦隊はパストーレ艦隊に突如生じた裂け目に突入。同盟軍になんの被害も与えず、その空隙を突破しようと試みる。そしてももちろん、眼前を通り過ぎようとする獲物に、パストーレ後衛艦隊はが躊躇する謂われはなかった。急速後退より一転、一気に前進し、敵艦隊の左側面に熾烈な攻撃を加えたのである。敵艦隊は更に速度を増し、突破を図る。その後ろに後衛艦隊が追撃を仕掛ける。およそ半数の敵に背面をとられて、被害を出しつつも前進を続ける敵艦隊だったが、ここにフィッシャー中佐率いるパストーレ前衛艦隊が右側面より攻撃を加えたことによって、戦列が崩壊。そののちは前衛艦隊、後衛艦隊が合流しつつ、両翼
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