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【旧】銀英伝 異伝、フロル・リシャール
イゼルローン回廊外遭遇戦
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で活動したのである。艦隊の指揮系統に異常はないか、衛生問題、食糧支給に問題はないか、医療設備は万全か、そういった今まで面倒で誰も手を付けなかった艦隊の面倒事を、怒濤の勢いで解決していったのである。
 もっとも、フロルにとっては、「仕事が特にないから、暇で仕方がなかった」という話なのだが、おかげでパストーレ准将は、最近注目株の閣下なのである。つまり、フロルに、原因の何割かがあるのだった。


「艦数はいくらか! 大雑把で良い、どれくらいだ!」
 第4艦隊パストーレ分隊司令部で、誰よりも先に困惑より立ち直ったのは、フロル・エシャール少尉だった。彼は司令部の幕僚補佐としてここにいたのだが、当の幕僚は硬直より立ち直る様子すら見せていなかったのだ。
「敵総数……3000隻! 当艦隊とほぼ同数です!」
「わかった。距離はどのくらいだ? 時間的距離で出してくれ」
「ほぼ、15分です!」
「近いな……、わかったありがとう」

 フロルは猛烈に頭を動かしていた。唐突な遭遇戦、自分は心構えがあったからいいものの、この艦隊は虚を突かれたと言ってもいいだろう。恐らくどの艦隊も慌てふためいてばかりだろう。それに近い。方角も問題だ。ほぼ右側面をとられたと言ってもいい。やはりこの宙域に来た時に、探査衛星を配置するべきだったのだ。

「閣下!」

 フロルは未だ開いた口が塞がらぬ体で呆然としているパストーレ准将に向かって叫んだ。パストーレはその声で今初めてフロルの存在に気付いたかのようにフロルを見た。

「敵艦隊が急速接近中です。急ぎ戦闘準備を!」
「せ、戦闘だと!?」
「はい、時間にして残り15分で交戦状態に入ります! 急ぎ艦隊に戦闘準備命令を出して下さい!」
「貴様! 少尉の癖に口の聞き方に気をつけろ!」と言ったのはフロルの横にいた、幕僚である。
(そんなことを言ってる場合じゃない!)

 フロルは怒鳴りつけたかった。この状況でまだそんなくだらないことを言っている上司が信じられない。

「閣下! 今は言い争いをしている時間はありません! 直ちに戦闘準備を!」
「わ、わかった。艦隊に指令、ただちに戦闘準備! そして右舷回頭??」

「閣下!」
 フロルはそこで声を上げた。パストーレは思わず、その少尉を再び見つめる。
「な、なんだ!」
「今から回頭しても混乱を招くばかりです。ここは逆に艦隊を左舷に大回りに回って、敵の側面を突くべきです!」

「バカなことを言うな!」違う幕僚が言う。「そんなことができるか、我々は速やかに回頭して本隊と合流すればいいのだ!」
 それができないから、俺はこれを言っているのだ。

「閣下」
 フロルはいきなり声を大人しくした。ここでこちらまで激情に駆られ激論しても、時間を浪費するばかりである
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