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【旧】銀英伝 異伝、フロル・リシャール
事は動き始める
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めに出兵させるというのか」
「はい、どうやら治世において大した業績を上げなかったことをごまかすためだそうで」

 ボルテックは物腰柔らかく、目の前に座っている男に言葉をかけた。ボルテックにとって領主の席は魅力的である。だが、自分がこの男よりも有能である、という勘違いはしていなかった。少なくとも、今は、自分よりこの男の方が優れている。それは政治的手腕、という点においてもそうであったし、謀略、果ては色の道においてもそうだった。今は彼の元で、少しでも多くを吸収し、いつかより上の地位を目指したい、と考えるボルテックである。

 対して、ルビンスキーは専制政治という厄介な代物について考えていた。彼にしてみれば、専制政治など非合理的で前時代的な政治形態に過ぎなかった。そもそも少数が大多数を虐げながら支配しようとすること自体、非効率的なのである。あの制度はルドルフ・フォン・ゴールデンバウムのような異常者、他人を統率する能力に突出した天才にしか運用できぬ。皇帝、という地位はそのような者だけが辛うじて担いうるのだ。そのルドルフにしてみても、年をとってからは明らかな能力の低下によって晩節を穢した。天才は死ぬまで天才とは限らない。若き頃は聡明を誇った王が、晩年に虐政に狂うこともよくある話なのだ。

 更に言えば、政府や国家という政治組織を単一の者が管理運営することは、並大抵の職責ではない。その結果、皇帝という者に率いられる存在であった帝国は、今やその外周に群がる外戚貴族などによって壟断されている。皇帝フリードリヒ4世の無能がわかるというものだった。もっとも今の皇帝は30年間に渡って、悪政を引いたわけではない。ただ漫然と現状を維持し続けただけの30年である。だが、ルビンスキーの評価は高くない。組織の長たる者、常に組織の繁栄を目指すべきだ、というのが彼の主義なのだ。その点、皇帝は論外なのだった。
 同盟にしても同様である。建国の機運も気概も忘れ、前例主義と事なかれ主義に走り、帝国に対する軍事活動も政治外交も平凡と無能の間、というところだった。経済に至っては年々フェザーンへの依存を強めるばかり。おおよそ、優れた国家運営からはかけ離れている。だが、ルビンスキーは民主主義が悪いとは思わない。安全度が高い統治方法である、とは評価している。だが権力の集中と暴力を恐れるがあまり、優秀な者が一人や二人現れていても、その他の無能によって頭を押さえつけられる。もしルビンスキーが同盟に生まれていれば、到底耐えられないことだっただろう。その点、彼はまさにフェザーンに生まれるべくして生まれた男なのだ。

 彼は自らの掌の上ですべての物事が進むことを好む。そのためにもっとも必要なものは、軍事でも、はたまた経済でもない。情報であった。情報こそが彼の最大の武器であり、そしてその脳髄がそれを最大
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