暁 〜小説投稿サイト〜
【旧】銀英伝 異伝、フロル・リシャール
ヴァンフリート4=2の激戦 (前)
[1/6]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話

ヴァンフリート4=2の激戦 (前)

 宇宙暦794年3月21日、0240時、ヴァンフリート星域会戦が開始された。同盟にはかつてフロルが配属されていた第5艦隊や、ボロディン中将率いる第12艦隊が参加していた。フロル自身もまた、この作戦に後方基地という立場にあって、参加していた。
 この間、フロルはずっと薔薇の騎士連隊(ローゼンリッター)の訓練に参加していた。彼自身の才覚も多少はあったにせよ、その熱心と努力は薔薇の騎士連隊(ローゼンリッター)の強者共も、一目をおくものであった。彼は連日死にそうになりながら参加し、その合間で基地副司令の職務を果たしていたのである。

 ヴァンフリートにおける会戦は、両軍が敵に対して繞回進撃を加え、前後からの挟撃を図るという、大規模かつアクロバティックな作戦案を採用していた。だがお互いにその作戦案に固執し、現状の把握と掌握を怠ったため、いつまでも続くだらだらとした迂回行動は終わりを見せようとはしなかった。基地にいるフロル自身、原作と同じ艦隊戦に歯がゆい思いをしていた一人である。無論、敵軍にも金髪の若い准将が同じ歯痒さを共有していただろうが、それを知るのはフロルだけである。
 その結果同盟はロボス司令長官率いる総司令部が実戦部隊から孤立するという、滑稽な事態にまで陥っていた。その中で繞回進撃を加えていた第5艦隊などは、総司令部より反転帰投の命令を受けていたのだが、それを無視して独自の行動を保持した。のちにこれは、大きな役割を持って来るもので、その点ではビュコック提督の判断は英断と言われるべきものであったろう。


 そうした中、敵の一個艦隊が、ヴァンフリート4=2の北半球に現れた、と報告があったのは3月26日のことであった。
「リシャール中佐! これはいったいどういうことかね!」
「セレブレッゼ中将、とりあえずは落ち着いて頂けますか?」
 フロルのこの一言は、彼の中の激情を押さえつけるのに一役買ったと言える。フロルの冷静沈着さはかつての上官であるセレブレッゼ自身も知りうるところであり、その彼がここまで落ち着いていること事態が、彼の不安を大きく削ぐ役割を果たしていたのである。
「中佐、これはいったいどういうことなのだろうか」
 彼は改めて、司令官の椅子に座り直し、出頭させた中佐に問うた。
「敵はこのヴァンフリート4=2に現れましたが、その目的はこの基地の攻略ではない、と言えるでしょう。仮にこの基地の存在を知っていたならば、北半球に基地を設営する前に、上空からその圧倒的火力で我が基地を攻撃していたに違いないからです」
「なるほど、貴官の言うことは道理に叶っている」
 セレブレッゼは努めて、冷静に頷いてみせた。いかに彼が軍事的な能力に乏しいと言っても、位が上の者が慌てふためくのはみっともない、と思
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ