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【旧】銀英伝 異伝、フロル・リシャール
秋の空の回想
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を過ごした。
 だが精神年齢24歳におかげでマせた子供、という評価は常に俺につきまとった。それは致し方ない。もっとも、大した問題も起こさず、多少大人びた、変わった言動をしながらも、すくすくと育つ俺に、両親は本当に良くしてくれた。

 いや、こんな言い方は卑屈だろう。
 俺も父レイモン、母アンナを愛している。
 そう、もう一人の両親として。
 本当に大切な、家族である。


 そんな俺がハイネセンの国立大学ではなく士官学校に入学する、と二人に告げた時の彼らの動揺と言ったらなかった。正直、二人には未だに申し訳ない気持ちがある。自分の可愛い一人息子が軍人になると言ったのだから。だが俺は二人を必死に説得して、士官学校に入学した。

 なぜなら、自分のいた世界が銀河英雄伝説の世界だからである。
 俺は個人的に、軍隊とか国家主義とか、そういう規律でがんじがらめに縛って、人のために自己犠牲、なんて考えは大嫌いだ。虫酸が走ると言ってもいい。高校時代、悪友だったフェザーン人、ボリフ・コーネフと仲良くなった由縁でもある。
 
 だが、それでも、ここは銀英伝の世界なのだ。
 
 今はまだ無名のヤン・ウェンリー、ラインハルト・フォン・ローエングラム??今はまだミューゼルだが??が名を馳せ、銀河の勢力図を一変させることを、彼は知っていたのだ。もっともこれは前世の、それもフィクションの話なのだが自分の持っている記憶すべてが、この世界はまさにあの世界だと告げていた。
 同盟軍の将軍にビュコック将軍がいて、グリーンヒル将軍がいて、帝国にはミュッケンベルガー元帥がいるのだ。
 

 だから、俺はこの世界を精一杯生きてやると決めた。

 このチートな知識を使って、自分の才能と技量で生きてやろうと決めたのである。

 そしてもう一つ、その目的があった。
 ヤン・ウェンリーだ。

 俺は前世で、自他ともに認めるヤンのファンだった。小説でもアニメでも、ヤンが暗殺されたときには、号泣したものだ。だから、俺はこの世界でそれを阻止する。例え俺の命を引き換えにしても、俺はそれを止める、そう決めたのである。



「まーた、こんなとこで寝てるの? 不良士官候補生さん?」
 目を開けると、音楽室の窓からジェシカ・エドワーズがこちらを見下ろしていた。

「やぁジェシカ、今日はいい天気だと思わないかい?」
「そうね。素敵な秋の空だわ。それにしてもなんだってフロル・リシャール先輩が士官学校でなくて、この音楽学校で時間を潰してるのかしら?」

「今日の午後の授業は戦史研究だけでね、つまらんから抜け出してきた。まぁあとでヤンにでも聞けばいいさ。ヤンに教わる方が、あのよぼよぼの教官に聞くよりマシってもんだぜ」
「まったく、こうなると可哀想なのはヤン
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