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【旧】銀英伝 異伝、フロル・リシャール
アルレスハイム星域会戦
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 参謀長は作戦参謀を集めた。作戦参謀はたいてい各艦隊に4人ほど配属されており、そのうちの一人が参謀長として上位におかれる。作戦会議はこの4名と各種高級将官が集まって行われる。ビュコック提督の副官ファイフェル大尉も参加するであろう。
 ちなみに副官はファイフェル大尉なのだが、ビュコック提督のお茶汲み係はフロルの仕事、ということになっている。
 当初、副官であるファイフェル大尉はそれに抗議したのだが、フロルが入れた紅茶の方と自分の入れたものを飲み比べた結果、圧倒的にフロルの方が美味しいことを認め、今ではビュコック提督が紅茶を頼む時には自分の分もフロルに頼むようになっている。年齢ではフロルよりも年上であるが、士官学校出のエリートであるフロルの方が階級は上である。当初は気に止んでいたようだが、フロル自身がまったく気にしてないことを繰り替えし説いたため、今ではなんの罪悪感もなしに注文を出している。

 さらに困ったことに、ビュコック提督がフロルの紅茶をたびたび褒めた結果、旗艦リオ・グランテの作戦課ではフロルの紅茶が話題となり、お陰で作戦会議のたびに出席者全員分の紅茶をフロルが用意する、という奇妙な事態に発展した。もっとも作戦参謀の中で一番の若手であるフロルにとってしてみれば、普段から暇を持て余しているので、これくらいの仕事があった方が精神衛生上良いという理由から、拒否も抗議もしていない。おかげで彼が茶坊主である、という認識がリオ・グランテでは流れる始末であった。だが反って不思議な事に、平の兵卒の間では「士官学校出のエリートが茶坊主をしている」ことが親しみを覚えるらしく、エリート将校であるはずのフロル・リシャールはその人柄を含めて、一般将校の間ですらある種の憐憫を持ってそれなりの人気を持つようになったのである。

 無論、彼がまったく望んでいない感情ではあったが、特に気にする事もしていなかった。彼の器の大きさ、と言えばその通りなのだが、ビュコック提督当たりに言わせれば「あいつは面倒が嫌いな男だからな」ということであり、無意識に人から好意を得るように動いていると、考えているようであった。



「今回の作戦は、フェザーンから齎された情報によって立案された。敵艦隊がアルレスハイム星域に潜んでおり、哨戒にやってくる同盟艦隊を攻撃する意図あり、とのことだ」
 参謀長が作戦会議の出だしを飾った。
「敵艦隊の艦数は?」
 作戦参謀が問う。
「フェザーンからの情報によると、7000から10000隻。第5艦隊は13000隻であることを考えると、正面対決で負けることはないだろう」
「その情報の信憑性は?」
「不明だ。よって本国は敵艦隊より最低でも3割多い数を揃えたのだろう。もっとも敵は小惑星群に潜んでいる。正面切った艦隊戦は不可能だと思われる」

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