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ノルマ
第一幕その二
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第一幕その二

「ローマにいた」
「君とアダルジーザがか」
「そうだ。ヴィーナスの祭壇の上でな。純白の衣装を身に纏い紅のバラをその美しい髪にさした彼女が僕の横にいたのだ」
「そしてどうなった」
 フラヴィーオは問う。
「それは一瞬だった。辺りは眩い光から闇に変わり」
「そして」
「稲妻が煌き次の瞬間にアダルジーザは消えていた」
「悪夢だ」
 フラヴィーオはその光景をこう評した。
「まさに悪夢だな」
「その悪夢は妖気に包まれ墓場の中にあるようだった。そして」
「そして。何だ」
「子供達の泣き声、僕とノルマの声に混じって」
「君は何かを聞いたのか」
「そう」
 蒼白の顔で新月を見上げながら。言葉を続ける。
「ノルマの声を。彼女の笑い声を」
「恐ろしい話だ!」
 フラヴィーオは首を横に振って半ば叫んだ。
「正夢にならないことを祈る」
「全くだ。それは」
 ポリオーネが青い声で応えた。この時鐘の音が響いた。
「ガリアの鐘か」
「彼等の儀式だな」
 ローマは他の宗教や習慣には寛容であった。ポリオーネもそれは同じで彼等の習慣にしろ文化にしろ認めていた。ドルイドもまた。
「何か不穏な気配を感じるが」
「兵を用意しておくか」
 フラヴィーオは真剣な顔でポリオーネに提案してきた。
「どうするか」
「そうだな。それがいいか」
 ポリオーネもそれに頷いた。
「どうも最近彼等の動きが怪しいしな」
「用心にこしたことはない」
 彼は言う。
「そうするか」
「ここはこれまで通りか」
 フラヴィーオは言う。
「ローマ軍の力で」
「そうだな。あのカエサル以来のやり方だ」
 それでローマは今の地位を築いてきた。ポリオーネもフラヴィーオもそのやり方に絶対の自信を持っていたのである。
「それで行こう」
「わかった。それではな」
「今から備えるとしよう」
 ポリオーネは総督として、軍人として言った。彼が今のこのガリアの総督でありフラヴィーオは彼の親友であり参謀であるのだ。
「反乱に備えてな」
「ローマは永遠だ」
 ある意味においてフラヴィーオのこの言葉は現実のものとなる。
「それを見せてやろう」
「その通りだ。それでは軍の駐屯地に向かうぞ」
「うむ」
 こうして彼等は自分達の本拠地に帰った。その頃ガリア人達はドルイド達の他に兵士や彼らにとって必要不可欠な存在であるバード、それに尼僧達も交えていた。そうしてその物々しい集まりの中でまた言うのであった。
「さあノルマよ」
「今こそ」
 彼等はノルマを呼ぶ。
「我等のまで出て」
「その馬葛篭の葉で飾られた髪を見せよ」
「その神々しい姿を」
「今我々に」
 彼等はノルマを呼び寄せる。それい応えるかのように今輝いてもいない筈の月明かり
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