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ノルマ
第三幕その二
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第三幕その二

「ですがオロヴェーゾよ」
「何だ?」
「我々は何時までこうして」
 今回のことが失敗だとすると。それを思わずにはいられないのであった。
「いればいいのでしょうか」
「それはわからない」
 オロヴェーゾも苦渋に満ちた顔で彼等に答えるしかなかった。
「確かに惨いことだ」
「そうです」
「何時までこうしてローマの前に跪いているのか」
「何時まで」
「それは私も同じだ」
 彼もそれはわかっている。だからこそ今回の蜂起も指示したのだ。
「だが神々はまだ我々の方を向いては下さらない」
「そうですか」
「死んだ者はいないな」
「はい、全く」
 誰かが死んでいれば亡骸を手に入れられそこから今回の蜂起のことがわかる。だからそれを確かめたのである。
「ならばいい。知らぬふりだ」
「何もなかった」
「我々にとっては何もなかった」
 それを強調するのであった。
「それでよいな」
「はい、それでは」
「その時まで」
 蜂起もなかったことにして立ち去る。こうしたことも度々のようであった。だがそれも終わる時がある。何かが起ころうとしていたのだ。
 その森の中にノルマもいた。彼女は一人でこれからのことを考え微笑んでいた。彼女とポリオーネのことをだ。
「あの方が帰ってくる。アダルジーザのおかげで」
 アダルジーザを信じていた。それを誓い合ったのだから。
「あの方とまた一緒になれるのね。それを考えると夜だというのに太陽が見えるよう」
 新月の空を見上げる。今彼女はそこに太陽を見ているのであった。
「幸せがまた私のところに」
 そこにクロチルデがやって来た。そうしてノルマに声をかけてきた。
「ノルマ様」
「どうしたの?」
「お気持ちを確かに」
 彼女はまずノルマにこう言ってきたのであった。
「どうか」
「何があったというの?」
 彼女のその言葉に不吉なものを感じる。それで問わずにはいられなかった。
「一体何が」
「アダルジーザ様が訴えられたのですが」
「ええ」
「駄目でした」
「馬鹿な、そんな」
 ノルマはまずはその言葉を信じようとしなかった。
「彼女はあれ程言っていたのに。どうして」
「ポリオーネ様の御心は変わらなかったのです」
「そんな、そんなことが」
「あろうことかそれに」
「それに」
「あの方はアダルジーザ様を追いかけて」
 クロチルデの声が震える。ノルマはそれを聞いてさらに不吉なものを感じるのであった。
「悲しみと苦しみに打ちひしがれられ祈りに来たアダルジーザ様をこの森まで追いかけて」
「この森に入り。そして」
 これには言葉を失いかけた。それはガリアの者達にとっては誇りを傷つけられることであった。森に勝手に入られるだけでなく尼僧を奪われそうになるとは。
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