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レッドバロン
第一章
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                    レッドバロン
 カール=ザムエル=ルード少尉は念願のパイロットになれた、彼は夢と期待に満ちた顔で周囲にこう言った。
「パイロットになった、それならな」
「撃墜王になるっていうんだな」
「それに」
「ああ、戦争はまだ続いているからな」
 今彼の祖国ドイツはイギリスにフランス、そしてロシアを相手にしていた。フランスとの国境では激しい戦いが続いている。
 その中で彼は言うのだった。
「俺のこの腕でな」
「ドイツを救うんだな」
「イギリスやフランスの戦闘機を撃墜して」
「どんどん墜としてやるさ」
 その意気込みを見せて語る。
「そしてドイツは最後には勝つからな」
「勝たないとな、本当に」
「全くだな」
 周りの者達もルードの言葉に応えて言う。
「若し負ければ領土を取られるぞ」
「しかも法外な賠償金を突きつけられる」
 このことは両方共不幸にして的中する。
「そうなればドイツは終わりだ」
「勝たないとな」
「ああ、だからだよ」
 勝利か破滅か、それ故にだった。
「俺は戦うからな」
「ドイツの為に空で」
「そういうことだな」
「今ドイツは苦しいけれどな」
 戦線は膠着していた、戦死者もかなり多い。
 それでルードも言ったのである。
「俺はやるさ」
「エースになってだよな」
「ドイツを勝利に導くんだな」
「ああ、そうするよ」
 まさにそれが彼の望みだった。 
 そうしたことを話してそのうえでだった。
 彼は前線に出た、空に出るとすぐに多くの敵機が彼の前に出る、その彼等を見てすぐ敵に向かう、そして。
 宙返りに突撃、ありとあらゆる技術を使ってだった。
 敵機を倒していく、数回出撃してそれでも生きていた。その彼に基地司令が笑顔でこんなことを言ってきた。
「頑張ってるな」
「はい、もう五機撃墜しました」
 それだけの数をもう撃墜していた。それで彼も笑顔で応えた。 
 だがここでこうも言う彼だった。
「けれどですね」
「ああ、一瞬でも気を抜けばな」
「それで撃墜されますね」
「戦場は一瞬でも油断すればそれが死につながる」
 司令も厳しい顔で言う。
「そして特にな」
「ええ、空はそうですね」
「他の戦場以上に危険だ」
 一瞬の中の一瞬でも気を抜けば離れた場所にいる敵機がすぐ目の前にいる、そして激突してしまうことになる。 
 これは友軍機の場合も同じだ、それでなのだ。
「だから本当に常に周囲に気を配っていないとな」
「死ぬのはこっちですからね」
「初陣で死ぬ率も高い」
 他の戦場よりもだ。
「これまで意気揚々と出撃した新米パイロットが帰って来ない」
「そういう奴は本当にですね」
「それだけでも大変だ」
「はい、本当にですね」

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