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星河の覇皇
第六部第二章 害虫その三
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 それが結論であった。連合とエウロパは互いを批判しながらも学び合い、そこから何もかもを作っているのだ。彼等はまさしく双子であった。そういう意味からは。
「我々と彼等は案外似ているのかもな」
 八条もそう考える時がある。彼は連合においては非常に珍しい貴族的な雰囲気を持つ人物とされていた。連合においては多くの王国、そして所謂帝国が存在するが貴族的な感じを残しているのは日本位である。
 ロシアもそうした雰囲気を残せたのだが二十世紀の共産革命で妙な方向に流れた。今ロシアは力自慢の国とみなされている。ロシアのそうした一面が異様にクローズアップされる状況となってそのまま定着してしまった。アメリカや中国にはその様なものはない。他の国にでもある。元々欧州から独立した国や苦しめられた国が殆どである。彼等にとって貴族とはそうした意味でも忌まわしいものであった。
 だが日本は違う。欧州の勢力の支配下にあったことはない。そして皇室の存在があり、独特の文化があった。その為貴族的な文化も僅かながら継承されたのである。
 二十世紀後半から二十一世紀初頭には絶滅寸前であったがそれが見直されたのだ。それが今の日本の文化風俗に影響したのだ。
 それが日本をして連合内でも一種独特な雰囲気を持つ国にしていた。その為時には『連合の中のエウロパ』と呼ばれたり『連合の異端児』と揶揄されることもあった。当然爵位などというものは存在しないがそうした雰囲気だけでも連合においては異様なものなのである。
 その象徴が皇室である。だがあまりにも一言で語るには複雑なのでこれについて言及する者はあまりいない。八条は今では日本のそうした一面の代表者の様に言われていた。
「そんな貴族的かな」
 八条はそうしたことを聞くと時々そう思ってしまう。
「私はそうは思っていないのだけれど」
 だが他の者、特に異性からはそう認識されているのだ。これも難しい問題であった。
 しかしそれが彼の評判に影響しているかというとそうではなかった。連合内でもエウロパの貴族的なものを真似てみたりそのゆるやかな生活に何処か憧れを持つ者もいた。その底ではやはり連合市民であっても。人は時としてそうした異質なものに憧れるものなのである。
 そう、異質であった。日本も八条もそうした意味で何処か異質であった。だが連合においては異質な存在は実に多い。個性を重要視するこの勢力においてはそうでないと目立つことはできないし自己主張もままならないのだ。その視点から考えると八条の貴族的な外見は有利であり、日本の異質さもいいことであった。話はそうそう単純なものではないのである。
「さて」
 彼は考えを止め席を立った。時間が来たのだ。
「行って来るよ。連絡があったらよろしく」
「わかりました」
 木口は答えた。そして彼は会議室に向かった。
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