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チェネレントラ
第四幕その五
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「先生が」
「はい」
 彼はまたもやにこりと笑ってそれに応えた。
「私が最初に貴方達の屋敷にお邪魔した時のことは覚えておられますね」
「ええ」
「勿論です」
 ティズベとクロリンデがそれに頷いた。
「あの時はどうも」
「はい」
 二人はここでアリドーロのやんわりとした嫌味を甘んじて受けることにした。後悔していた故であった。
「あの時貴女方は私には何も下さいませんでしたね」
「申し訳ありません」
「本当にものがなかったもので」
 二人はそう言って頭を下げた。
「それはわかっておりました」
「では何故」
「お妃様はそんな中で私に恵んで下さったのです、パンとコーヒーを」
「何処にそんなものが」
「ご自身のお食事から。ささやかなものでしたが」
「そうだったの」
「あの娘だってろくに食べていないのに」
「そう、その中から私に恵んで下さったのです。何と心の優しい方でしょうか」
「けれど私達は優しくはなかった」
 ティズベはそう答えた。
「そんな者に恵みは与えられないわ」
「それは違います」
 だがアリドーロはまたそう答えて二人を宥めた。
「よろしいですか」
「はい」
「貴方達がとられるべき道は二つあります」
「二つですか」
「そうです。このまま縛り首の恐怖に怯えるか、若しくはあの方に慈悲を乞うか、です。どちらに致しますか」
「そう言われても」
 三人はそう言って口篭もった。
「私達は許されはしないでしょうし」
「彼女も許すつもりなぞないでしょう」
「そう思われているのですね」
「はい」
 三人は項垂れてそう答えた。
「そうとしか思われません」
「縛り首になっても宜しいのですかな」
「それは・・・・・・」
 力なく首を横に振った。
「そうでしょう。そうだと思いました。それでは駄目元でやってみてはどうですかな」
「許しを乞うのですか」
「はい」
 アリドーロはそう答えて頷いた。
「それしかありませんぞ」
「わかりました」
 マニフィコはそれに応えた。
「それではやってみます」
「御父様」
「よいか」
 彼は娘達に対して語りはじめた。
「よしんばわしが縛り首になるとしてもだ」
「はい」
「御前達の命だけは救ってみせるからな。あの娘が一番憎んでいるのはおそらくわしじゃから」
「いえ、私かも」
「そんな、私よ」
「どうやらどうしようもない連中ではなかったらしいな」
 アリドーロはそれを見て呟いた。
「ならばよし。それでは最後の舞台に向かおう」
 彼はその場を後にした。三人だけが残っていた。彼等はまだ色々と話をしていた。
「それではよいな」
 最後にマニフィコがそう念を押した。
「ええ」
「それしかないわね、やっぱり」
 娘達が頷く。それを受けてマニ
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