第六部第一章 星河の海その二
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った。
見れば家族や恋人との別れを惜しむ者もいる。彼等は抱き合い、そして別れ言葉を口にしている。
実際に彼等のうち幾らかは生きて帰っては来れないだろう。それが戦争だからだ。
その中にはアッディーンも当然入っている。彼も戦場に立つからだ。
だが彼を出迎える者はいない。両親には来ないように言っている。何かあったら親にとって辛いことになるからだ。
少なくとも彼はそう考えている。だが他の者が別れの挨拶をしていてもそれについてはとやかく言うつもりはない。人それぞれだからだ。
アリーの前に来た。既に幕僚達が総員で立っていた。
「お待ちしておりました」
ガルシャースプが彼等を代表して敬礼をして言った。アッディーンはそれに返礼した。
「外交部のスタッフは来ているか」
「ハッ、既に艦内に全員入っております」
「そうか」
「もうこれからのことについて仕事をはじめているようです。私が朝来た時にはもう全員いました」
「アッバース外相もか」
「ええ。外相は昨夜のうちに来られたそうです。当直士官から聞きました」
「またえらく気合が入っているな」
アッディーンもこれには少し驚かされた。
「外交部も真剣だという証拠でしょう。いいことだと思いますよ」
「そうだな」
「では漢へ。もうすぐ出港の時間ですよ」
「わかった」
彼は幕僚達を連れ艦内に入った。艦内では既に船員達が各自の持ち場についていた。
「司令が乗艦されました」
「わかった」
艦橋に報告が入る。艦長はそれを聞いて了承して首を縦に振った。
アッディーン達が艦橋に入ると持ち場に就いている者以外が総員で敬礼をした。アッディーンも機敏な動作でそれに返した。
「では今から南方に向けて兵を進める」
アッディーンは言った。
「ハッ」
幕僚達がそれに答える。
「全軍まずはカッサラに向かう。そしてそこから南方に侵攻する。いいな」
「わかりました」
「よし」
アッディーンは了承したように頷いた。そして言った。
「南方侵攻作戦、ハッティーン作戦発動!」
これが戦いを告げる笛の音となった。こうしてアッディーンに率いるオムダーマン軍は南方に向けて侵攻を開始した。三十個艦隊、総兵力五千万による一大侵攻作戦のはじまりであった。
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