第一幕その一
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「それとこれとは関係ないわよ、唄とは」
ティズベも続く。二人共不機嫌を露わにしていた。そして妹に対して言葉を続ける。
「大体あんたが家事をやるのも仕方ないでしょ、末っ子なんだし」
「それもお義母様の連れ子だったんだし。それでも家に置いてもらっているんだから文句言わない」
「はい」
チェネレントラは姉達にそう言われ仕方なく俯いた。
「それにあたし達が王子様と結婚できたらあんたにもいいことがあるのよ。それはわかってるでしょ」
「そうそう、あんたも王妃様の妹君、それは忘れないでね」
「はい」
やはり力なく頭を垂れる。ここで玄関の扉をノックする音が聞こえてきた。
「あら、誰かしら」
「チェネレントラ、出て」
「はい」
チェネレントラは姉達に言われて出る。見れば貧しい身なりの老人であった。
「あの」
「何でしょうか」
チェネレントラはその老人に尋ねた。別に侮蔑の目で見てなどはいなかった。
「お恵みを」
「あ、駄目よチェネレントラ」
二人の姉が後ろから言った。
「うちにはあまり余裕ないから。いいわね」
「けど」
「どうしてもっていうんならあんたの渡しなさいよ、いいわね」
「わかった?」
「ええ」
彼女は頷くとまず自分の部屋に戻った。そして一杯のコーヒーと一片のパンを持って来るとその老人に手渡した。
「少ないですがこれを」
そしてそのパンとコーヒーを手渡した。老人はそれを受け取るとチェネレントラを驚きと喜びの顔で見た。
「本当に宜しいのですか?」
「はい」
彼女は頷いて答えた。
「是非お食べ下さい」
「それでは」
彼はそのパンとコーヒーを食べ、飲みはじめた。そしてコーヒーカップを彼女に返した。
「有難うございます。おかげで助かりました」
「いえ、いいです。御礼なんて」
だがチェネレントラは微笑んでそう言った。
「困っておられる方をお助けするのは当然ですから」
「そうですか。何とお優しい」
老人は感動したような声を漏らした。しかしここでまた後ろの姉達が言った。
「チェネレントラ、私達も困っているんだけれど」
「ちょっとドレス持って来て」
「あ、はい」
それを受けて衣装部屋に向かう。扉は閉められ老人は何処かへ消えたと思われた。その時であった。
派手な行進曲が流れてきた。そしてそれは家の前で止まった。それから玄関の扉が開けられ大勢の制服を着た者達が入って来た。
「ドン=マニフィコ様のお屋敷はここでしょうか?」
先頭にいる一際大きな男が言った。
「あ、はい」
「そうですけど」
二人の姉が出て来た。そしてその大きな男に恭しく頭を垂れた。
「ようこそ、我が屋敷に」
「はい」
大男も頭を垂れた。
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