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仮面舞踏会
第三幕その四
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はしなかったのだから。
「待てっ、何処へ行く」
 だが伯爵はそんな彼等を呼び止めた。
「!?」
「何処へ行くつもりなのだ」
「知れたこと、帰るのだ」
 二人の伯爵はそれに答えた。
「我等の狙うのはあくまで王」
「卿ではないからな」
「待て、王を狙うのだな」
「そうだが」
「また次の機会にな」
「わかった」
 彼はそこまで聞いて頷いた。
「明日の朝私の家まで来てくれ」
「卿の家にか」
「そうだ」
 彼は言った。
「是非共。いいだろうか」
「何か考えがあるようだな」
 二人の伯爵は彼の顔を見ながら言った。見ればその顔には険しい皺が引かれている。
「わかった。ではお邪魔しよう」
「明日の朝だな」
「うむ。是非共来てくれ」
 彼はそれに応えて頷いた。
「是非共な」
「最早我等を害しても卿の為にはならぬしな」
 王に裏切られた彼がもう忠誠を尽くすとは思えなかったのである。
「明日の朝、確かにな」
「うむ」
 三人は挨拶を交わして別れた。ホーン伯爵とリビング伯爵はそれぞれ別の道を通って姿を消した。彼等の部下達もそれに続いて姿を消す。
 後にはアンカーストレーム伯爵とその妻だけが残った。夫は妻に顔を向けた。不吉な皺が走り、憤怒を抑えている顔であった。
「帰るぞ」
「・・・・・・はい」
 一言だけであった。夫人はそれにこくりと頷いた。
 そして二人は処刑台の側から姿を消した。赤い朧な月の光の下風が処刑台の血生臭い匂いを運んで来ていた。

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