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星河の覇皇
第五部第二章 狩りその三
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かりました」
 本部長は答えた。電話越しに頷く。
「気付かれないようにな、くれぐれも」
「それは心得ております」
「ならいい。頼むぞ」
「はい」
 こうしてマウリアの連合への諜報活動が開始された。それは迅速にして徹底したものであった。
「友好関係にあるからといって油断してはいけない」
 クリシュナータはそう考えていた。
「この銀河は生き馬の目をくり抜いてでも生きていく世界だ。とりわけ政治は」
 極めて現実的な視点からそう見ていた。
 彼はそういう意味で現実主義者であった。そしてそこに妥協はなかった。
「これからどうなるか誰にもわからない。神々以外は」
 そう考えていた。そしてその考えのもとに動いているのだ。
「だが我々は我々のできる限りのことをしなければならないのだ。それが今の人生でするべきことだ」
 彼もまた輪廻転生を信じていた。それはマウリアの者にとって永久不変のものである。
 夜になっている。街の灯りが見える。
「美しいな」
 クリシュナータは夜景が好きだった。それを見て仕事の疲れを癒すのが常だった。
「この夜景を守る為にもな。手を尽くさなくてはならない」
 そしてまた仕事に戻った。彼はそうして深夜まで仕事を続けた。

 マウリアの諜報部員が入ってきているという情報は連合中央政府にも入っていた。八条はキロモトからそれを聞いた。
「マウリアからですか」
「そうだ。おそらく今回の観艦式の件でだろう」
 キロモトは電話で彼に対して言った。
「彼等にとっても今回の観艦式は関心があるのだ。当然といえば当然だが」
「そうでしょうね。元々そうした宣伝も兼ねていますから。他の勢力への」
「うむ。だが彼等が諜報部員を送り込んできたのはおそらくそれだけではないだろう」
「といいますと」
 八条は問うた。
「我々の今後の行動も監視したいようだ」
「まさか我々がマウリアに侵攻するとでも考えているのでしょうか」
「おそらくな。我々の軍事力を警戒しているようだ」
「それは当然ですが」
「しかし我々には彼等に対して武力行使を行う意図はない、と言いたいのだろう」
「はい」
「だが彼等はそう考えないこともわかっているね」
「はい」 
 それがわからぬ八条ではなかった。
 隣により国力の高い国があった場合それを警戒するのは常である。連合内でも政治的経済的にそうしたことはある。言うならば国際情勢の常識である。
「そういうことだ。だからこそ彼等は動いた」
「どうなさるおつもりですか」
「とりあえずは彼等にある程度の警戒をしておこう。だが緩めにしておくべきだ」
「何故ですか」
「特に警戒する必要もない。国家機密に触れるならばその時点で捕らえるなりしたらいい。そして送り返す」
「送り返すということは荒立て
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