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八条学園騒動記
第十九話 もてない苦しみその二
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「ほら、これ」
「おい、待て」
 七美に声をかけられた彼はムッとした顔を彼女に向けた。
「これって何なんだよ」
「だからこれよ」
「俺はこれか」
「何か悪い?」
「もっとましな言い方があるだろうが」
 彼は抗議する。彼の名はカムイ=サシン。アイヌ連邦出身である。何でも白い肌でアジア系の顔立ちなのはアイヌの血のせいらしい。アイヌは白人説があるのだ。もっとも今では既に混血しているが。
「これって何なんだよ」
「いや、クラスの変わり者の話しててさ」
 七美はしれっとして述べる。
「それでサンプルにと」
「俺はサンプルかよ」
 不機嫌そのものの声で返す。
「ったくよお。俺は常識人だね」
「そうかしら」
 だが七美の声は冷たい。
「知ってるわよ、この前」
「何だよ」
「ネロやアロアと飲んで騒いでたそうね」
「それがどうかしたかよ」
 未成年だが何故か飲んでいる。連合では意外と未成年、高校生の飲酒はいい加減でわりかし問題にもなっている。煙草もまた然りだがこのクラスでは喫煙者はいないようだ。
「彼女欲しいって」
「それがどうしたよ」
 ふてくされて開き直ってきた。
「別に御前にはよ」
「まあ私には関係ないけれどね」
「それが奇人変人のサンプルになるのかよ」
「それでもてない男委員会とか作ってるそうね」
「何、それ」
 彰子はそれを聞いてキョトンとした顔になる。
「変な組織みたいだけれど」
「学園の裏に救う影の組織よ」
「俺は悪の大ボスかよ」
 流石にこれにも抗議する。
「誤解招くようなこと言うな」
「けれど本当でしょ」
「まあな」
 やはり憮然とした顔のままであったがそれは認めた。
「本当だったの」
 これには彰子も驚きであった。
「うちの学校にそんなのがあったんだ」
「他には闇の嫉妬団とか悪の恋愛撲滅教とかあるのよ」
「何か漫画みたいね」
「まあ何かと広い学校だしね」
 そういう問題ではないと思うが七美はそう説明した。
「色々な組織があるのよ。あんた嫉妬団でもあったわね」
「まあな」
「バレンタイン撲滅親衛隊とか」 
 最早何の組織なのかさえわからない。だがそういうものもあるらしい。
「他にも一杯」
「もてない男の子の組織なの?」
「ええ、そうよ」
 七美は彰子にそう述べた。
「女バージョンもあるわよ」
「ふうん」
「そっちはそっちでややこしいけれど」
「あいつ等は敵だ」
 カムイはそう主張する。
「もてない男のマイナスパワーをわかっちゃいない。それでどうしてもてない女なんて言えるんだ」
 何か勝手な主張であるが本人は本気である。
「ふざけやがって。何時か殲滅してやる」
「あの、七美ちゃん」
 彰子はその横で七美に囁く。
「何かよくわから
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