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八条学園騒動記
第二話 妹と兄その三
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「ここなのね」
「うん、ここ」
 スターリングが蝉玉に答える。後の二人は後ろにいる。 
 扉自体は何の変哲もないアパートの扉だ。本当に何もおかしなところはない。むしろその前にいる面々の方が異様な程であった。
「じゃあ行くわよ」
 蝉玉は後ろにいる三人に声をかけた。
「ドカーーーーーーーンとね」
「ドカーーーーーーーンて」
「何するのよ」
 彼女にスターリングとエイミーが尋ねる。
「一体全体」
「決まってるじゃない殴り込みよ」
 蝉玉は腕まくりをしていた。
「それでうちの兄貴を」
「蝉玉のお兄さんってそんな人だったか?」
「初耳だよ」
 ベンにスターリングが返す。どう見ても蝉玉が勝手に暴走しているだけなのである。
「そんなの」
「そうよね、私も聞いたことないわ」
 エイミーも二人の話を聞いて言う。
「私の二番目のお姉ちゃん蝉玉のお兄さんの同級生だけれど」
「あれっ、二番目だったっけ」
「二番目よ」
 スターリングに返す。
「大学のね」
「そうだったっけ」
「三番目のお姉ちゃんが一年生で」
「そうそう」
「で、二番目のお姉ちゃんが二年だったじゃない」
「そうだったんだ」
「確か三番目のお姉さんがベスさんだったよな」
「ええ、そうよ」
 ベンに答える。
「そして二番目のお姉さんがジョーさんで」
「一番上のお姉ちゃんがメグっていうのよ。覚えた?」
「ああ、まあな」
 ベンはその名前とおぼろげに覚えている顔を頭の中でインプットさせながら応えた。
「何となくだけどな」
「うちのお姉ちゃん達皆美人だから言い寄ってくる男が多くて」
 ここでエイミーは困った顔になる。
「それでいつも心配なのよ。まあ今のところは大丈夫だけれど」
「まああのお姉さん達なら大丈夫なんじゃないかな」
 スターリングが素っ気無い声で答える。
「どんな悪い男が来ても」
「何でそう言えるの?」
「いや、噂で」
「噂!?」
 今度はエイミーが首を傾げさせた。
「言ってる意味がよくわからないんだけれど」
「いや、俺はわかったぞ」
 どういうわけかベンには納得がいった話であったようである。
「そういうことか」
「うん」
 スターリングに顔を向けるとそのスターリングがこくりと頷いた。
「そういうこと」
「あれだったらまず大丈夫だよ。むしろ将来結婚出来るかどうかだな」
「何言ってるかわからないけれど」
「御前も注意した方がいいぜ」
 スターリングは何故かエイミーにこう声をかけた。
「下手したらどんな男でも寄り付かなくなるからな」
「一体何言ってるのよ」
 エイミーはその整った顔を顰めさせて二人に応えた。
「わかんないわよ、そんなこと言われても」
「わかったら結構ショックだよ」
「ああ、
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