第十話 推理漫画その三
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「うん」
「あの二人何処に行ったかわかるかしら」
「多分今生徒指導室ね」
「生徒指導室!?学校の?」
「うん、今頃生活指導の先生にこってりと絞られてるよ」
「それも勘?」
「っていうかすぐにわかるじゃない」
今度は勘ではない、そう言いたいようだ。
「今の時間学校から出ようと思ったら」
「それもそうか」
「そういうこと。けれど」
「けれど?」
「あの二人のことだから。そこでまた変なことしてなきゃいいけれど」
「それはあるわね」
何となるわかることだった。わかりたくはなくても。
「まあ明日になったら忘れてるでしょうね」
「それはね」
もっとはっきりとわかることだった。このクラスならば。
「で、風紀委員」
「呼んだ?」
黒い髪と目の結構な男前が出て来た。何かかなり派手な格好をしている。
「あの二人が生活指導の先生に捕まってるかも知れないけれど」
「ああ、また」
「またって」
「そりゃ彼等は悪いんじゃないかな、やっぱり」
「やっぱりって」
アンはその言葉にバツの悪い顔を見せた。
「風紀委員としてその言葉はまずいんじゃ」
「学校はさ、軍隊じゃないんだよ」
彼は言う。
「最低限の風紀さえしていればいいじゃないか」
「そういうものなの」
「そういうものだろ。それにこの八条学園は自由が校風なんだし」
「で、別に動かないってわけね」
「煙草とかそんなのじゃない限りは問題ないよ。学校から抜け出すのなんてあの二人じゃ普通だしフランツは何か激情のあまり崖を転がってたじゃないか」
「そういえばそんなことがあったわね」
ルビーがその言葉でフランツの過去の行動を思い出した。
「タイタンズが優勝逃した時だっけ。何であんなことしたんだろう」
「それも体育の授業中にね」
アンが呆れた顔で言った。
「とことん常識知らないわよね」
「それだって風紀委員の仕事じゃないだろ?」
「いや、それかなりずれてるわよ」
ジュリアがそれに突っ込みを入れる。
「そもそもあんた風紀委員の仕事は」
「何事も自主性だよ」
だが彼はそう言って取り合わない。
「だから僕はこれといって何も言わないんだよ」
「そうなの」
「そういうこと」
これがこのクラスの風紀委員ローリー=ハイデルであった。ヒッタイト出身でかなりいい加減な風紀委員として知られている。むしろ抜け道に詳しいとさえ言われている。
「それはギルバートがやるし」
「いや、あんたがやったら」
ジュリアは彼にクレームをつける。
「風紀委員なんだし」
「僕も言い出したら五月蝿くなるじゃない」
だがそれでも彼は動こうとはしない。
「だからさ。いいじゃないか」
「やれやれ」
ジュリアもアンもその言葉を聞いて溜息を出してみせる。
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