第九話 冷酷な笑みその一
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冷酷な笑み
「それで今回はな」
休み時間の教壇で四角い顔の形にひょうきんな顔立ちの少年が何かを皆に話していた。髪は黒くて多い。しかもやけに硬そうだ。韓国からの生徒で朴洪童という。クラスではムードメーカー的位置にいる。
「ちょっと落語を勉強してみたんだ」
「落語か」
ギルバートが腕を組んで洪童の話を聞いていた。
「日本の文化だな」
「ああ、最近ジャパニーズジョークってのにも凝っているんだよ」
洪童は扇をたたんで持っている。それを手に語っている。
「あれは中々よくてな」
「目の付け所がいいな」
「そう思うか?」
ギルバートの言葉に機嫌をよくする。
「だから俺もさ、最近勉強してるんだよ」
「だから私に落語の本借りたのね」
彰子はそれを聞いて言った。
「役に立ってるみたいね」
「おう、有り難う彰子ちゃん」
洪童の方でも彼女に礼を述べる。
「いやあ、落語ってのも奥が深い」
「そうなのか」
「何ていうのかな、間の運びってやつがあってな」
扇を手に語る。
「それが凄い難しいんだよ」
「ふうむ」
「例えばな。酢豆腐って落語だよな」
「酢豆腐?」
「知ったかぶりの若旦那の話ね」
黒いショートヘアに青の目の落ち着いたというよりは無表情の女の子がここで言った。クラスメイトの一人でプリシラ=ラドリックという。アルム出身である。クラスきってのクールとされている。
「そう、それ」
「あれは難しいわよ」
「そうなんだよな、とにかく一つ一つが深くて」
洪童は思いの他落語を勉強している。
「漫才とは違ってこれも。難しいんだよ」
「君はどちらかというと漫才の方がいいんじゃないのか?」
「そうか?」
ギルバートの言葉に応える。
「俺としちゃ落語もいいんだけれどな」
「他のはどうかしら」
プリシラも尋ねる。
「パフォーマンスとか物真似とか新喜劇とか」
「どれもいいけれどな」
洪童はお笑いの天才とまで言われている。何をやっても最高に笑わせられるのだ。それは最早神業、神童とまで言ってよい程であった。
「今は落語が一番やりたいな」
「そうなのか」
「ああ、何ていうかこれが一番奥が深いしな」
「落語ってそんなに奥が深いの」
「何だ、小式君知らないのか」
ギルバートがその言葉に顔を向けてきた。
「私あまり落語聞かないから」
「馬鹿な、日本人なのに落語を聞かないとは」
ギルバートは驚きを隠せなかった。
「しかもここは日本、やはり落語もまた」
「なあ」
洪童はギルバートの熱の篭もった言葉を聞きながらプリシラに尋ねてきた。
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