第五話 好きだから仕方ないその七
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「うわっ、本当に断ったよ」
ダニーは毅然と誘いを断ったルシエンに唖然としていた。
「まさかとは思ったけれど」
「予想通りね」
だがアンネットはそんな凄い場面を見ても落ち着いた様子を崩してはいなかった。ただ厳しい目は元に戻ってそのままルシエンを見ていた。
「予想通りって」
「そうでなくちゃ。私だって」
彼女は言う。
「デートする意味がないわ」
「デートするのに意味がいるの?」
「そうよ、少なくとも私にとってはね」
顔を上げて述べる。
「それだけの心がある人じゃないと。デートする意味がないわ」
じっとルシエンを見ていた。
「だからね。もういいわ」
「行くの?」
「ええ、丁度いい時間だし」
約束の時間から三十分程経っていた。彼女にとっては丁度いい時間であった。
「行って来るわね」
「うん。それにしてもさ」
「何?」
行く前に弟に顔を向けた。
「ルシエンさんって凄いね」
「そうね」
その言葉に頷く。それを言われて悪い気がしないのは事実だ。
「本当にね。そうじゃないとね。私だって」
「お姉ちゃんだって」
「あっ、これはね」
少し困った顔をして口を塞いだ。
「何でもないわ。気にしないで」
そう言って誤魔化す。
「いいわね」
「何だかよくわからないけれどいいよ」
ダニーがまだこうしたことをよく知らないのが救いであった。
「それじゃあね、お姉ちゃん」
「ええ、じゃあね」
弟に別れを告げる。そして何気ない様子を装ってルシエンの前に姿を現わしたのであった。
「御免なさい、遅れたわね」
しれっとして声をかける。
「あっ、全然」
ルシエンもさっきのことはおくびにも出さずにアンネットに応えた。
「俺も遅れちゃって。今来たところさ」
「そうなの」
「そうさ、だからここ来るまでアンネットが怒っていないか不安で仕方なかったわ」
「だったらいいわ。貴方が待っているんじゃないかと思って」
見ていたのはあくまで秘密である。
「それを聞いて安心したわ」
「心配することはないさ。俺だってさ」
「ところでね」
「うん」
話は変わった。
「デート、何処行くの?」
「遊園地って行ってなかったかな」
「あっ、そうだったかしら」
目を斜め上に向けて誤魔化す。ルシエンのことに夢中でそれは忘れてしまっていたのだ。彼女も抜けているところは結構抜けていたりする。
「そうだよ。チケットも用意しといたよ」
「準備がいいわね」
「デートだから当然だろ」
じっとアンネットを見て言う。
「二人でのデートなんだから」
はじめてというわけではないが。彼はアンネットとのデートはいつもこうして全力で真剣勝負を行っているのだ。そこに手抜きや油断は一切ない。
「じゃあ行くぜ
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