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魔王の友を持つ魔王
§23 叢雲古老恵那委員会、あとしまつ
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の下に隈が出来ている甘粕が馨に問いかける。髪はボサボサ、服はしわくちゃで泥まみれ。ほつれもちらほら見えている。靴は底がすり減りすぎていることが一目でわかる。過労死直前のサラリーマンを思わせる風貌だ。古老の混乱により正史編纂委員会の上層部が機能麻痺していたせいで、今回の件の工作が難航したのだ。

「意見の相違により一部が離反。御老公直々にこれを粛清、とあるけどね」

 甘粕もエルが黎斗に言った「連絡が取れなくなりました」という発言は聞いている。黎斗が幽世に転移した後エルと黎斗の通信手段も途絶えてしまったこともエルに聞いて確認している。あれは明らかに黎斗と周囲を分断しようとする動きだった。その後行われた須佐之男命による大虐殺。外国の組織なら誤魔化せるかもしれないが、流石に国内組織(じぶんたち)はこの違和感に気付く。情報が全く無ければ違和感も流していたかもしれないが、これだけ情報が集まれば看過するわけにはいかない。

「水羽さんが仮に人間だったとしても”元まつろわぬ神”と敵対して生存している時点でおそらく神殺しを成し遂げている」

 黎斗との通信手段が隔絶してから古老半壊による大混乱が発生するまで相当の時間が経過している。全ての戦闘から逃走しきるのはいかな術者といえども不可能に近い。まして幽世。更に戦闘に遭遇して生き残っているのだ。神を殺していても、おかしくは無い。というか、状況的な証拠がそろい過ぎている。そもそも複数の神を相手に逃げ切る時点で人間を辞めているだろう。

「では、そのような対応を?」

 カンピオーネとして扱うのか、と暗に問いかける甘粕に、馨は一人笑って返す。

「まさか。我らが魔王陛下(・・・・・・・・)が沈黙を望むのなら、そのように計らうのが賢明なんじゃないかな。対外的には”人間の術者”として扱わせてもらおうか。御老公の秘蔵っ子なんだろう? そのままの扱いでいこうか。どうしようも無い案件が発生した時に私達が個人的に相談(・・)すればいい。おそらく無碍にはされないだろうしね。幽世に彼は単独で移動できる。しかも平然としているのだろう? 現世の厄介事に巻き込まれるのが嫌なら幽世で隠遁したりなんなり手はある筈だ。出てきているという時点でこちらに関わってくる意思が皆無とは思えない」

 草薙護堂に続き、二人目。日本人で日本在住。しかも傍にいるのは清秋院家の媛巫女のみ。魔術結社の影は無し。おそらく日本大好き。これは正史編纂委員会(じぶんたち)にとって絶好の機会だ。調子が良すぎて嘘なのではないかと疑うくらいに。だからこそ、慎重にいかなければ。下手を打って機嫌を損ねたら終わりだ。今、他組織に先んじているからとはいえその状態に驕り魔王(カンピオーネ)の逆鱗に触れるわけにはいかない。それに、先輩魔王((くさなぎごどう
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