第四十三話 ナンシーのプレゼントその四
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「貴方の為だけに。だから」
「わかりました」
後輩はその言葉ににこりと笑って応えてきた。
「それじゃあ」
「有り難う」
受け取ってもらった。ナンシーは自分の手からチョコレートが離れたのを見てその顔をさらに緩めるのだった。心から嬉しそうな顔で。
「よかった。受け取ってもらって」
「受け取らない筈がないですよ」
彼も笑顔のまま言う。
「だって。先輩の気持ちが僕だけに」
「貴方以外見ないわ」
こうまで言ってきた。
「だって。だから」
「食べて欲しいんですね」
「よかったらよ。多分味かなり酷いし」
「そんなことないと思いますよ」
彼はまた言った。
「どうしてそう言えるの?」
「先輩の気持ちの味がしますから」
「私のって・・・・・・そんなこと言っても」
「食べるんですよね」
またナンシーに問う。
「いえ、食べていいんですよね」
「お願い」
真っ赤な顔のままで応えてきた。
「だから。本当にね、一口で」
「はい」
その言葉に応えてラッピングを外す。赤とピンクの紙の装飾からダークブラウンのチョコレートが姿を現わしてきた。それを見てナンシーの方が息を飲んでいた。
「いよいよなのね」
「ええ」
「本当にまずかったら止めていいから」
念を押してきた。
「ね。本当に」
「ですから大丈夫ですって」
念を押してきた。
「ほら」
一切れ割って口の中に入れた。
「美味しいですよ」
「本当!?」
その言葉に顔を晴れやかにさせた。
「美味しいの!?本当に」
「はい」
満面の笑顔であった。その笑顔が何よりの証拠であった。
「とても。甘くて牛乳の味がして」
「それね。苦労したの」
また顔を赤くさせて述べてきた。
「チョコレートの中に牛乳入れるの。加減が難しくて」
「そうなんですか」
「けれどよかった。上手くいったみたいね」
そのことにまずはほっとしていた。
「美味しかったみたいでよかったわ」
「はい、美味しいです」
「クラスの皆にもあげたけど」
「えっ」
彼はこの言葉にはかなり慌てた。
「皆って」
「馬鹿ね、義理チョコよ」
それはちゃんと断る。
「安心して。いいわね」
「そうだったんですか、よかった」
「貴方以外にこんなに凝ったチョコレート渡さないわよ」
照れながら答える。顔がお酒を飲んだ時より赤くなっていた。
「わかるでしょ、もうそれは」
「はい」
その言葉にこくりと頷く。
「本当によく」
「だかだよ。それは安心して」
「わかりました。それにしても」
「何?」
ナンシーは彼の言葉にまた顔を上げてきた。
「先輩料理の才能ありますね」
「そ、そうかしら」
その言葉にまた頬を赤らめさせてきた。
「それだったらいい
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