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くらいくらい電子の森に・・・
第七章 (2)
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、途中からよく分からなくなったんだけど。会社が、開発チームに何をしようとしてるって?」
柚木がいったん話を切った。紺野さんは、どこか煮え切らないような感じで髪をくしゃりと掴み、頬杖をついた。
「ここからは、本当に俺の憶測なんだよ。ただ、この不自然な状況をみると、そうとしか考えられない」
「不自然な、状況?」
「このタイミングで、俺に隠してのSEやプログラマーの大量雇用。…そして性急過ぎる、俺達への帰還指示。それに伊佐木は、採った奴らをMOGMOG開発に関わらせようとした…」
「…僕、なんか分かってきた」
僕に一瞥くれると、紺野さんは苦々しげに珈琲をあおった。
「採用した人たちに仕事を引き継がせて、紺野さんたちを追い出すつもり…なんじゃない」
「…まぁ、最終的にはな。でも、今ただ単に俺達を追い出しても、奴らには何のメリットもない。…この話には、まだウラがあるんだ」
カツン、と音を立ててカップを置くと、正面を睨みすえた。
「俺も一応保身のためにな、俺の直訴で開かれた開発会議や、プログラムの配信方法を決めた開発会議の議事録を調べたんだよ。だが…議事録は、なかった」
「…!!」
「会議室予約も確認したが、全て取り消しになっていた。…つまり、あいつらが俺に指図して不正行為をやらせた『証拠』は、何も残っていないんだ」
「そ、それじゃぁ」
「…そういうこと。あいつら、最初から逃げおおせるなんて思ってなかったんだよ。…俺達は体のいい生贄だな」
頭がぐらりと揺れた。僕に関係ない、遠い世界の事情を聞いているはずなのに、僕は自分でもびっくりするほど落胆していた。

――これが、大人の社会か。

「なにそれ!そんな会社、内部告発して倒産させちゃえばいいのに!!」
柚木が激昂して乱暴にカップを置いた。僕はといえば…この二人が、怒りのあまり珈琲セットを残らず粉砕するんじゃないかと、場違いな心配をしていた。
「それは出来ない」
紺野さんはカラになったカップを脇によけると、顔の前で指を組み合わせた。
「何で!?そんな会社に忠誠誓う必要なんてないじゃない!!」
「そ、そうじゃないよ柚木。内部告発なんかしたら、再就職できなくなるから…」

「見くびるんじゃねぇ、馬鹿」

匕首を突き通すような声で言い放つと、組んだ指の間から僕を睨みつけた。
「ば、馬鹿…?」
「SEだとかプログラマーだとか、色んな横文字で呼ばれてるがな、俺達の本質は『職人』なんだよ。俺達が忠誠を誓うのは『会社』なんかじゃない。ましてや食い扶持の心配なんざ論外だ」
紺野さんは組んでいた指をゆっくりほどいて静かにテーブルに置いた。
「俺達が忠誠を誓うのは、俺達が創りあげた『作品』。それだけだ。…俺達がヤケになって内部告発騒ぎを起こしたらどうなると思う。MOGMOGの発売
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