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蒼き夢の果てに
第4章 聖痕
第35話 仮面の支配人ファントム
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 時空結界を解除してからは、タバサとの間で表面上、当たり障りのない通常の会話だけを交わしながら、呼び鈴を使用して軽食を注文する。
 但し、普通に考えたら、こんな行動を行うバカはいないのですが……。

 何故ならば、未だ確実にこのカジノが殺人祭鬼に関わって居るとは言えないのですが、それでも、ここは青天井をうたい文句にした民営カジノで有る上に、精神に作用する危険な薬物を使用している違法カジノでも有ります。
 こんなトコロの準備する飲食物に手を出すような事を為せば、その後にどうなったとしても、それはウカツな自らの責任。普通に考えるならば、そんなウカツな人間では、明日の朝には鬼籍に入っている可能性の方が高いでしょう。

 そもそも、食事や酒に眠り薬やしびれ薬をまぜて、客を前後不覚の状態にした上で、金品を強奪する飲み屋の話は何処にでも有りますからね。
 現実(リアル)の世界でも、そして、虚構(フィクション)の世界でもね。

 しかし、逆に言うと、カジノ側に俺とタバサがそんなウカツな人間だと思わせて置く事は悪くはない選択肢だと思いましたから。
 まして、運が良ければ、これから行う可能性の有る勝負の際に、相手の切り札のディーラーがタバサの事を侮って来る可能性も有ります。

 そう。所詮、この世は化かし合い。まして、ここは初めから違法性を前面に押し出しているカジノ。こんなトコロで正々堂々と王者の勝負を挑んで、それで負けたら、何の意味も有りません。
 俺も。そして、タバサの方も、ひとつしかない生命をチップに、分の悪い勝負を挑んでいるのですから……。

 もっとも、普通に考えると、所詮これは小細工にしか過ぎないのですが。
 この程度の小細工で惑わされるレベルの敵ならば、かなり楽が出来るのですが……。まぁ、それは無理でしょう。
 それに、打てるだけの手は全て打つ。このカジノに潜入した瞬間から勝負は始まっていますから。

 そうして、このカジノのメイドが運んで来た軽食と、この豪華な休憩室に備えられていたワインを二本処分して、待つ事しばし。

 おもむろにノックされる扉。その瞬間に、今回の任務のもっとも重要な部分が開始される。

 ゆっくりと、ひとつ首肯く蒼き姫(タバサ)。普段通りの彼女に相応しい感情を表現する事のない透明な表情。しかし、普段とは違う、強い決意を秘めた瞳の中心に俺を映して。
 その決意を受け取り、扉の前に立つ俺。

 ……って言うか、現状では完全にタバサ専属の従僕状態の俺です。

 そして、重い木製の豪奢な細工の施された扉をゆっくりと開く。
 俺が開いた扉の向こう側、少し昏い(くらい)廊下用の明かりの元には、このカジノの従業員の黒服が立っていました。
 昏い(くらい)廊下側から、明るい室内を覗き込ん
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