暁 〜小説投稿サイト〜
人狼と雷狼竜
真夜中の遭遇。紅い曳光
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 夜の森は暗い。昼間ですら乱立する多くの木々が日光を遮り光を通さないのだから尚更だ。
 月は雲に隠れ、僅かな光しか地上に(もたら)さない。しかし、そこには確固たる強い光があった。
 炎が齎す光だ。無造作に集められた木々が燃えてパチパチと爆ぜる音と共に、宙へ細かい火の粉が舞う。周囲を支配しているのはこの音と、焼ける肉の香ばしい匂いだ。
 日も沈み夜となった山の中では、普通ならありえない光景だが、彼にとってはそうでもないらしい。
 適当な石を椅子にして、ヴォルフは携帯用の肉焼きセットで肉を焼いていた。傍には頭を失ったガーグァが倒れ、片足を腿の部分から断たれている。焼かれている肉はこれだろう。
 この辺りには、ガーグァが多く生息している。家畜として人に飼われているものも多く、こうして食材にされることも多々ある。
 場違いだが、ヴォルフの傍には両手で抱えるほどの黄金に輝く卵があった。これはガーグァが産んだ卵だ。
 このガーグァ狩る際にその隣にいたもう一羽が、首を失って倒れる同族に驚いて産み落としたのだ。通常の卵でもそれなりに栄養価があるというが、黄金だと更に上らしい。荷物にはなるが捨てるのもアレなのでヴォルフは持っている事にしたのだ。
 今、ヴォルフが陣取ったのは木々が余り密集していない広場のような地帯で、昼間は日光が直接あたっているようで苔の類は生えておらず乾いた土が剥き出しになっている場所だ。
 こういった開けた場所は、モンスターの襲撃があっても対処しやすい。森林を住処とするモンスターは、自身の姿を隠す遮蔽物である木々の合間から奇襲を仕掛けて来るものが殆どだからだ。
 不意にヴォルフの鼻腔が僅かに動く。肉の焼ける物以外の臭いを感じ取ったのだ。臭いの方向に目をやる。
 炎の明かりに照らされた岩場には数匹の獣人がおり、ヴォルフの方へ近付いて来ていた。
 アイルーの亜種であるメラルーだ。好奇心が旺盛なのは共通だがアイルーと違って手癖が悪く、旅人やハンターの荷物を掠め取るという悪癖がある。
 それはヴォルフも理解しているので殺気を込めた視線を送る。それを感じ取ったのか、メラルー達の動きが変わった。硬直したと思うと、すぐさま脱兎の如く走り去って行く。関わったら怪我では済まないと本能が感じ取ったのだろう。
 ヴォルフはそれを確認すると、肉焼き機のクランクハンドルを回す。何やら呑気な音楽が聞こえて来そうな雰囲気だ。
 再び、ヴォルフがメラルーの臭いを捕らえる。臭いの方向には、一匹のメラルーがいた。その視線はヴォルフが焼いている肉と、調理中のヴォルフを交互に捉えている。
「……」
 ヴォルフはたった今焼き上がった肉を肉焼き機から外すと、メラルーに差し出した。
 肉を差し出されたメラルーは驚いてヴォルフをじっと見詰めていたが、少しずつゆっ
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