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その男ゼロ ~my hometown is Roanapur~
#45 "dizziness"
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死んでいるのにその事を認められないでいる奴。
一度死んで別の名前を持って生まれ変わった奴。
色んな連中がいるんだろうさ、俺なんかにはわからないけれど。

けど、

ソイツらは確かにこの街に"在る"
この街の住人として、この世界の構成要素として間違いなく。

こんな考えはただの僻みでしかない。
自分が生きてるかどうか解らないなんて、そんなもの中学生までには片付けておくべき問題だ。
今更真面目に考えるべき代物じゃない。
それよりも此処が一体どこなのか確認しろ、自分の身体に異常がないか確認しろ、自分を拐った奴が近くに居ないか、首を動かすくらいはしろ……

また頭の何処かでそんな考えが浮かぶ。
さっきよりは脳の表面に近い、そんな気もした。

「………」

だからと言って何をどうするわけでもなかったのだけれど。
目は相変わらず天井を見上げ、指一本動かそうともしなかった。
ただまあ、自分が今寝ているのが何やら柔らかいソファのようなものである事には気付いた。
序でに身体も特に束縛などはされていないことも。

そんなある意味、恵まれた環境下で俺は益体もない思考活動に耽っていた。
あの双子に出会って、抱き締めてもらって、胸の中で泣いた事で俺の中で何かが変わった。
それがこんな風に変わってしまうとは我ながら情けない限りだ。
いや、本音じゃ情けないとも思っていない。
何かどうでもよくなってきている。

誰かに自分を認めてもらいたい。
理想の自分になりたい。
生まれ変わりたい。
この街で新しい人生を歩み出したい。
ラグーン商会の一員として相応しい人間になりたい。
ダッチから頼りにされたい。
ベニーの手助けがしたい。
レヴィに一人前の男として扱われたい。
"アイツ"にどうだって言ってやりたい。
自分の思い描くロックになりたい。

そういう思いが身体のどこにも残ってやしない、ただただここに寝てることしか出来ない。
頭の中でこんな事を考えることは出来ても、これからどうするのかなんてこれっぽっちも考えようともしない。
自分の中身が丸ごと抜かれて空っぽになったような気分、とでも言えばいいのだろうか。 それとも最初から俺に中身なんて上等なものは在りはしなかったんだよ、とでも(うそぶ)くべきなのだろうか。

こういう場面で吐くべき言葉といったら……

「死にたいな……」

やっと出てきたのはそんな言葉。
何とも軽々しい台詞だ。
しかし一度死んだ人間が吐くには最も似つかわしくない言葉ではなかろうか。
そしてこの街で吐き出される数多ある言葉の中で、最高のジョークかもしれない。
一度死んだ人間がもう一度死にたいなど……

「そいつぁ
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