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戦国異伝
第五話 初陣その十

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「さしづめな。それじゃ」
「蛟龍ですか」
「今は潜んでおる。だがやがてはじゃ」
「水から出て天に届くのですね」
「それが織田じゃ。見誤ってはならん」
 朝倉では彼だけがそう見ていた。信長の力は見る者は既に見抜いていた。そしてそれは表にいる者達だけとは限らないのであった。
 何処であろうか。闇の中でだ。彼等が蠢いていた。そしてその蠢きの中で話をしていた。
「ふむ、尾張か」
「はい、織田です」
「那古屋のです」
 彼等はこう話をしていくのだった。
「あのこの前元服したばかりのです」
「織田信長といったな」
「はい、その者です」
「その者ですが」
「あの者、どうやら」
 ここでだ。彼等は言うのだった。
「尋常なものではないな」
「武田や長尾と同じなのか」
「若しくは北条、そして毛利」
「戦国に大きく出るか」
「いや」
 闇の中で一人が言った。
「どうやらそれ以上かも知れぬな」
「それ以上だというのか」
「他の大名達とは違うのか」
「あの者達以上なのか」
「もしかするとだ」
 その一人がこう話すのだった。
「我等も脅かすかも知れぬな」
「ふむ。それではだ」
「今のうちに仕掛けるか」
「そうするか」
 闇の中にいる者達はその言葉を受けてだ。次々に話すのだった。
「芽は摘んでおかねばな」
「摘めぬにしても仕掛けておけばな」
「それで何かあるかも知れぬ」
「そうするか」
「それでは決まりだな」
 真ん中から声がした。
「織田信長に対していずれは仕掛けるか」
「はい、そうしましょう」
「それでは今すぐに」
「そうしますか」
「いや、まだだ」
 中央の声はそれは止めたのだった。
「まだだ。まだ仕掛けるな」
「仕掛けないのですか」
「それはまだなのですか」
「まだしないのですか」
「少し後だ」
 そうだというのである。少なくとも今ではないことは間違いなかった。
「今すぐでは。あまり効きはせぬな」
「だからなのですか」
「今ではない」
「では何時でしょうか」
「あの者、見た通りの力があるならば」
 信長を見ていた。ここにいなくともだ。彼等は間違いなく信長を見ていた。そうしてそのうえで闇の中で話をしていくのであった。
「おそらく尾張一国はだ」
「統一しますか」
「容易に」
「放っておけば尾張だけには止まらぬだろう」
 中央の声はこうも言うのだった。
「さすれば。尾張を手に入れんとするその時にだ」
「仕掛けると」
「そうされるのですね」
「その時でよい。今はよい」
 また言うその声だった。
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