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戦国異伝
第三話 元服その十
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「一度持ちいればな」
「左様ですか」
「決して、ですか」
「そうだ、それでいく」
 これは吉法師の信念をそのまま言っていた。
「わかったな」
「わかりました、それでは」
「我等もまた」
 吉法師の心を受ければだった。彼等もまた自然と己の心を見せるのであった。
「吉法師様を決して」
「裏切りはしませぬ」
「例え何があろうとも」
「頼むぞ。わしが目指すものは大きい」
 彼は言うのであった。
「その目指すものを手に入れる為にもだ」
「我等の力」
「是非お使い下さい」
 こうそれぞれ言い合うのであった。吉法師は今己の股肱の臣を手に入れていた。
 そしてある日のこと。彼は弟の勘十郎、そして竹千代を連れて城の外を歩いていた。後ろの二人は折り目正しい服だが彼の服装は相変わらずだった。
 茶筅髷に赤い紐、それに派手な上着に半袴、大きな刀の鞘は赤や青で彩られている。その服で城の外を練り歩いているのである。
 その彼を見てだ。竹千代が思わず問うた。
「あの」
「何だ?」
「その服装でいいのですか?」
 戸惑いながら吉法師に問うていた。
「その様な派手な格好で」
「何、いつものことだ」
「いつものことですか」
「わしの格好はいつも見ているのではないのか?」
 戸惑いを隠せない竹千代に対して平然とした顔で返してみせる。
「違うか?」
「それはそうですが」
「ならどうして驚く」
 口調もまた平然としている。
「それならだ」
「しかし。吉法師殿はやがて信秀様の跡を継がれるのですね」
「その通りだ」
「なら余計にそうした格好は」
「ははは、真面目一辺倒をする者は既におるからな」
「既にとは?」
「まずは私です」
 いぶかしむ竹千代の横から勘十郎が言ってきた。
「私はこうしたことしかできぬので」
「勘十郎殿がですか」
「左様、それに対して兄上はです」
「ああした格好をですか」
「格好だけではなく、です」
 彼もまた落ち着いていた。それどころか微笑んでさえいる。そのうえでの言葉だった。
「何をされるにしても破天荒でよいのです」
「破天荒でよいとは」
「竹千代、学ぶことは大事だ」
 吉法師は今度は首を傾げさせた竹千代に対して言ってみせた。
「しかしそれだけでは駄目なのだ」
「それだけではですか」
「そこから己で色々としてみるのだ」
 それが重要だというのである。
「そうしていいものを見出すのだ」
「いいものをですか」
「わしにとってはこれだ」
 今の格好だと。こう話すのだった。
「近頃傾奇者という連中がいるな」
「聞いたことはあります」
 竹千代は吉法師のその言葉に応えて述べた。
「堺等栄えている場所をたむろしている奇矯な服装の者達ですね」
「そうだ、それだ。そし
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