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戦国異伝
第十九話 夫婦その十四

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「剣は確かに必要ですが」
「それだけでは駄目だと」
「剣は一人を相手にするもの」
 そうだというのである。謙信はだ。
「軍を相手にするものではありません」
「だからですね」
「その通りです。それがわかっておられないというのなら」
 顔を曇らせての言葉だった。
「公方様にとってよくありませんが」
「その時はどうされましょうか」
「御護りします」
 むべもない言葉であった。
「私は関東管領ですね」
「はい、その通りです」
「関東管領とは何か」
 それこそがだ。今謙信が語る源だった。
「わかりますね」
「関東において公方様をお助けすることです」
「簡単に言えばそうです」
 こう返す謙信であった。
「即ちです。私はです」
「公方様に何かがあれば」
「その時は動きます」
 そうするとだ。心に剣を持ち語る。
「そうしてお助けします」
「その為の剣なのですね」
「我が剣は戦に勝つ剣にあらず」
 違うとだ。それは否定してであった。
「悪を斬る剣なのですから」
「悪を」
「そう、悪をです」
 言い切った。見事なまでにだ。
「斬る。ですから直江よ」
「はい」
「二十五将と貴方もです」
「無論です。我々はです」
「共に参りましょう」
 姿勢を正してだ。その直江を見て微笑んでの言葉だった。
「よいですね。それで」
「参らせて下さい」
 自分からこう告げた直江であった。
「是非共」
「是非にですか」
「そうです。謙信様のそのお心が目指すものを」
 どうかとだ。直江は言った。
「見させて下さい」
「わかりました。それではです」
「共に」
「参りましょう。正しき道に」
「それでは」
 彼等は誓い合っていた。そうしていたのであった。
 それぞれの国も動いていた。その中でだ。英傑達も動いていたのだ。


第十九話   完


                2010・12・15
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