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戦国異伝
第二話 群星集まるその十二
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「じゃあやっぱり」
「ここの殿様はいける、凄い殿様になるぞ」
「じゃあおいら達はその殿様に」
「仕えるぞ、いいな」
「いいのかね、本当に」
「いいんだよ。今川様よりもずっといいぞ」
 こう話してであった。彼は弟を連れて吉法師の家臣の末席に加わるのだった。木下藤吉郎、運命の主に出会ったのであった。
 そして京の都でも。気品のある穏やかな顔立ちの若者が鋭利で涼しげな顔の若者と会っていた。どちらも折り目正しい服装をしている。
 その二人が見合っていた。まずは気品のある若者が言った。武家の姿をしているがその顔立ちは公家の様に整っている。
「光秀殿、御聞きになられたか」
「尾張のことですか」
 声をかけられた若者は白面で切れ長のいささか鋭い目をしている。細い顔に流麗な顔をしている。その彼が細川藤孝の言葉に応えたのである。
「まだ元服もしていないとか」
「それでもう名を知られていますな」
「おおうつけだそうですね」
 明智光秀はこう述べた。
「そうですね」
「はい、そう聞いています」
「しかし。聞いたところによりますと」
 明智はこう細川に返してきた。
「その田も街も見事なものだとか」
「見事なのですか」
「御存知の通り私は元々美濃の者です」
「はい」
「今は縁あってこうして将軍家におりますが」
「そうでしたね。明智家は下は美濃の家でしたね」
 こう明智のことも話される。
「ではその御縁で」
「尾張は隣の国なのでよく聞いております」
 そうだというのだった。
「それを聞くところ」
「如何ですか、その吉法師殿は」
「私にはうつけとは思えません」
 これが光秀の評価だった。
「これは甲斐の武田殿も越後の上杉殿も同じですが」
「そういえば土佐の方にも何かどうにもならない御嫡男がおられるそうですね」
「それは薩摩も同じです」
 二人の話には他の国のことがぽんぽんと出る。
「しかし武田殿、長尾殿はあの通りですし」
「薩摩の島津殿は今や飛ぶ鳥を落とす勢いですね」
「うつけと言われる方程実は違うものです」
 明智はこう述べた。
「ですから。織田の吉法師殿も」
「わかりませんか」
「私はそう思います」
 明智はこう話した。
「違うかも知れませんが」
「いえ、どうやら」
「細川殿もその通りだと思われるのですね」
「はい、残念なことに今将軍家の力は衰える一方です」
 これはもう如何ともし難かった。二人もこれはよくわかっていた。
「これをどうかしたくもあり」
「天下を平穏にしたくもあります」
「幕府も大事ですがとにかく今の天下の有様は何とかしなければなりません」
「まさにその通りです」
「管領の細川様も」
 細川の言葉に残念なものが宿った。
「家臣であられる三好殿との争いにか
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