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戦国異伝
第十七話 美濃の異変その四

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「しかしそれはじゃ」
「それは」
「どうだというのですか」
「今ではない」
 こう言うのであった。
「あ奴はまだ討たぬ」
「では信行様もあのままですか」
「今は」
「そうだというのですか」
「左様、その通りだ」
 信長はここでもだった。断言してみせたのであった。
「泳がせておく。そして謀反を起こさせだ」
「その時に津々木をですな」
「討つ」
「そうされますか」
「その後で勘十郎は軽く処罰する」
 それはするというのであった。
「それはな」
「しかし御命は、ですか」
「そこまでは」
「そうじゃ。軽くでよい」
 また言う信長だった。
「それでな」
「何はともあれあの男は」
「何があろうともですな」
「その時が来れば」
「消す」
 今度はこの言葉だった、
「よいな」
「ではその用意はあらかじめ」
「今からしておきましょう」
「あ奴に気付かれぬように」
「そうしておけ。ただしじゃ」
 信長はその津々木についても決して侮ってはいなかった。相手が誰であろうと決して侮り見くびることはない、それが彼なのだ。
「あの者を馬鹿にはするな」
「慎重にですね」
「そしてそのうえで捕らえ」
「そして斬ると」
「そうする。わかったな」
「わかっております」
 平手が家臣達を代表して応える。
「では。あの者はその時に始末するとしまして」
「今のことじゃが」
 信長は話を変えた。
「義父殿よ」
「はい、蝮殿ですな」
「やはり危ういですか」
「このままでは」
「間違いないな」
 信長ははっきりと言い切ったのだった。
「義父殿の敵は多い。それに対してじゃ」
「義龍殿が土岐氏の者と喧伝したならばですな」
「それだけで美濃のかなりの者がつく」
「そうなりますな」
「そうなれば義父殿は終わりよ」
 信長の言葉は冷徹であった。しかしそこには道三を気遣うものもあった。ただ現実だけを冷徹に見ているのではないのであった。
「どうにもならぬ」
「ではその時はですな」
「我等が動きそのうえで」
「蝮殿を助けますな」
「そうする。ではよいな」
「はっ」
 家臣達はまずは一斉に応えた。
「備えあれば、ですな」
「何時でも出られるようにしておけば」
「何の憂いもありませぬ」
「それに」
 しかもなのだった。織田には一つの強みがあった。
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