暁 〜小説投稿サイト〜
戦国異伝
第十六話 正装その十一

[8]前話 [2]次話

「そういうことじゃ」
「そうしたことが全て合わさって」
「そうしてそのうえで」
「ああしてでござったか」
「成程」
「深いですな」
「全くでござる」
 家臣達は深く嘆息するしかなかった。
「どうやらこの会見は」
「殿にとってただの勝ち負けではなかったのでござるな」
「義父殿の御理解も得られた」
「そこまでの」
「有り難いことよ」
 ここで満足した笑みを浮かべる信長だった。
「全く以ってな」
「これで美濃の方は大丈夫でござるな」
「向こうから攻めてくることはない」
「そうでござるな」
「最早」
「いや、より大きいであろうな」
 こう返す信長だった。
「これは」
「といいますと?」
「これ以上大きなものが得られたのでござるか」
「今は」
「若しかするとだがな」
 信長も流石に今は確証のない感じの言葉だった。
「わしは天下に向かう為の大きなものを得られたやも知れぬ」
「天下に向かう為の」
「といいますと」
「そなた達や帰蝶以外にじゃ」
「我等以外」
「しかも帰蝶様もというと」
「それは」
 彼等は主の言葉を聞いてだ。それで考えてだ。それからこう口々に言うのだった。
「殿をわかっているということですか」
「つまりは」
「そういうことですか」
「そうよ。それが義父殿よ」
 こう言うのであった。
「わしをな。理解してくれる者がじゃ」
「殿は得られたというのですか」
「つまりは」
「そうじゃ。これは大きい」
 信長はまた言った。
「実は美濃もじゃ」
「手に入れられるおつもりでしたか」
「戦か略で」
「そうしたものによりで」
「そうじゃ。しかしその必要はなくなったようじゃ」
 信長はそれが何故かも話した。
「義父殿がわしをわかってくれたからじゃ」
「では美濃はですか」
「やがて殿が譲られてですか」
「そしてお治めになられるようになると」
「そう仰るのですね」
「いや、そう上手くはいくまい」
 信長はそれはないと言った。言い切っていた。
「義父殿も敵が多い故な」
「美濃の蝮殿に反感を持っている者達が動く」
「そういうことですな」
「やはりここは」
「その通りよ。そう上手くはいくまい」
 また言う信長だった。
「やはりな」
「左様ですか、やはりは」
「しかし殿を解してくれる方がまた得られた」
「それは大きいですな」
「確かに」
「父上はわしのことをわかってくれていたがのう」
 信長は実父信秀のことも話した。もう今はいないその父のことをだ。
[8]前話 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ