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戦国異伝
第十六話 正装その十
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「殿は蝮殿より上よ」
「うむ、それは間違いない」
「あの蝮殿より上の器を持っておられる」
「それを天下に知らしめることができたな」
 こう口々に言うのだった。しかしであった。
 当の信長はだ。落ち着いた顔でこう彼等に言うのだった。今は全く笑っていない。
「いや、それは違うな」
「といいますと」
「一体?」
「どういうことでござるか」
「違うというと」
「つまりじゃ。わしがあの様なことができたのはじゃ」
 信長はその顔で家臣達に話すのだった。
「まずは御主等がいたからじゃ」
「というとここに来るまでのあの格好ですか」
「それでござるか」
「つまりは」
「そうじゃ。義父殿が見に来るのはわかっていた」
 それを察してなのだった。信長はあえてああして家臣達に傾いた格好をさせたというのである。そういうことだった。
「それでそなた達がいたからこそじゃ」
「ああして傾けさせてですか」
「それから正装にして」
「そういうことでござったか」
「そういうことじゃ」
 その通りだと話す信長だった。
「まずはそれじゃ。それにじゃ」
「道三殿が見られていたということですね」
 生駒がそこを指摘した。
「それですな」
「そうじゃ。義父殿はわかっておったのじゃ」
 信長は生駒の言葉に応えてこう述べた。
「それでああして略装で来られたのよ」
「というとあれは」
「道三殿はわかっていて殿に合わせられた」
「そういうことでござるか」
「その通りよ」
 まさにそうだというのであった。
「これでわかったか」
「何と」
「殿だけではなかったとは」
「道三殿までとは」
「それはまた」
「しかしその通りじゃ」
 信長はそれを実際のことだと言うのだった。
「だからこそああしたことができたのじゃよ」
「それは殿を認められたからこそですな」
「確かに。あの蝮殿は容易な方ではない」
「となるとだ」
「殿を認められたからこそ」
「だからこそ」
「そういうことよ」
 また言う信長だった。
「これでわかったな」
「では認められたその時は」
「寺に入る時」
「あの時でござるな」
「だからそなた達あってのことだったというのじゃ」
 それでだというのであった。
「そなた達がいたからあそこまでできたのじゃ」
「左様でござったか」
「成程」
「よくわかりました」
「そういうことであったのですな」
「そうじゃ。わしの言葉に従いそれで十二分の働きを見せてくれる家臣達が大勢いる」
 これこそが主の最大の宝である。信長はそれだけの宝を持っている、道三はそれを見たのである。
 そうしてだった。さらに話が為される。
「そうして槍と鉄砲も」
「それも見てですか」
「蝮殿は」
「最後に正装を見せたからの
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