第十四話 美濃の蝮その四
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「やってくれるか」
「はい、是非」
兄に対してすぐに答えた。
「そうさせて下さい」
「自分でしたことは自分で確かめても限度があるからのう」
木下はここで少し苦い笑いを浮かべてこんなことも言った。
「それでは頼むぞ」
「では」
「さて、何はともあれ帳簿は終わった」
それはというのだった。
「それではじゃ」
「城壁ですね」
「それだがのう」
「かなり厄介な仕事だと思いますが」
弟は怪訝な顔になって兄に述べた。
「これはまた」
「そう思うか」
「何しろ清洲の城壁全てをです」
「そうじゃな。全てをじゃな」
「それを速くなおすとは。これはまた」
「何、考えはある」
だが、だった。木下は笑ってこう話すのだった。
「わしにな。考えがあるぞ」
「お考えがですか」
「まあ見ておれ。わしなりに考えてみた」
そうだというのである。
「それをやってみるからのう」
「わかりました。ではわしお後でそちらに向います」
「来てくれるか」
「当然です」
兄にすぐに答えた彼だった。
「わしは弟ではありませぬか」
「だからか」
「左様です。ですから」
「では頼りにさせてもらう」
木下は弟のその申し出に笑顔で返したのだった。そしてだ。
彼はだ。こう告げるのだった。
「これからもな」
「はい、それでは」
こうして帳簿を確かめるのは弟に任せてだ。彼は城壁のところに向かった。そこには既に蜂須賀がいた。彼はいぶかしむ顔で木下に言ってきた。
「おい、猿」
「おう小六早いのう」
「早いのではない」
彼はこう彼に返した。
「それを言えば御主はじゃ」
「わしか」
「今頃帳簿にかかりきりかと思っておったのだぞ」
「ほう、そうだったのか」
「わしは丁度ここで大学殿とお話をしておったのだ」
佐久間重盛のことだ。
「戦のことでな」
「そうだったのか」
「その話も終わってそれで御主を覗きに行こうと思っておったのじゃ」
こう木下に話すのだった。
「しかし。もうか」
「そうじゃ。終わったぞ」
「早いのう」
蜂須賀はいぶかしむ顔になっていた。
「これまた実に」
「数字には強いからのう」
「五郎左殿みたいじゃな」
「あの方や平手様はまた別格じゃがな」
織田家でそういったことについてはやはりこの二人だった。
「五郎左殿はまた何でもできる方じゃからのう」
「だから前から殿にどんどん引き立ててもらっておるな」
「そうじゃな」
「あの方ならばな。納得できる」
主に引き立てられていってもそれでも周りからの嫉妬を買わない、丹羽の人柄故のことである。彼は今や織田家において柴田と並ぶ人物となっていた。
「誰もがな」」
「しかしその五郎左殿の如き速さでしてしまったか」
「それ
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