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戦国異伝
第十話 信行の異変その八
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 無論信長もだ。こう考えていた。
「そうよ、あ奴はそうした者ではない」
「だからこそですか」
「何かあればその時は」
「あの津々木という者、間違いなく怪しむべき者よ」
 信長の目が再び鋭くなった。
「間違っても油断してはならぬぞ」
「ではことがあれば」
「あの男は」
「そうだ、その時が来ればだ」
 信長の言葉はだ。ここでは一言であった。
「切れ」
「はっ、それでは」
「その時は」
「それで信行の目が覚めれば間違いない」
 信行についてはこうであった。
「若しあ奴に万が一叛意があれば止むを得ぬが」
「そうでない場合はですか」
「その時は」
「命は取らぬ」
 これが信長の考えだった。
「決してな」
「では追放ですか」
「そうされますか」
「いや、それもない」
 信長はそれも否定したのだった。そしてその理由も話した。
「勘十郎はわしにとっても織田家にとっても必要な者だ。それを追い出しては他の国の利になるだけ。それもまた決してせぬ」
「では一度処罰されたうえで、です」
 ここで平手が言ってきた。
「それから御赦しになられては」
「うむ、実はそう考えていた」
 信長も平手のその考えに頷いてみせる。
「用いるとすればそれが妥当だな」
「はい。ですが」
「わかっておる。この件あまりにも謎が多い」
 信長はいぶかしみ続けている。言葉にもそれが出ていた。
 そしてだ。腕を組みながら述べた。
「そもそも。信行があの様になったのはあの男と会ったからというが」
「術でしょうか」
「何かの術を」
「わしはそういうものは信じぬがな」
 これは信長の考えだった。彼はそうしたこの世の摂理から外れていると思われるものにはだ。あくまで冷淡であり続けているのである。
 だからこそこう言ったのだ。しかしである。
「だが。実際にそうしたものであ奴が操られているならば」
「謎を突き止めるべきかと」
「さもなければ真の解決にはなりませぬ」
「そうだな。それではじゃ」
 信長はまた考える顔になってだ。そうしてである。
「その後であ奴と直接会うのも考えておくか」
「その時ですが」
 川尻が進み出てきて申し出てきた。
「それがしが御護りしますので」
「それがしもです」
「是非共」
 黒母衣や赤母衣の面々がここで申し出るのであった。
 その彼等の言葉を受けてだ。信長は満足した顔になった。
 そのうえでだ。こう言うのであった。
「いざという時はだ。頼んだぞ」
「無論です」
「殿の御身体には何も起こさせませぬ」
「それは御安心を」
「それはこれまで気にかけたことはないが」
 信長は話の中でこのことに気付いた。
「そういえばのう」
「殿、それはいけませぬぞ」
 また平手がぴしゃりと言っ
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