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SAO─戦士達の物語
ALO編
七十七話 Wrath
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奴を睨みつける。涼人に関してはそう言った者が居ることをある程度理解しているためか、無言だ。

「…………カズ、一歩バック」
突然、とても静かな声で、涼人が言った。いきなりの言葉に、和人は戸惑う。

「え……?け、けど兄貴――」
「いいからさ。つーか――」


ジ ャ マ ス ン ナ


気が付くと和人は、一歩どころか三歩以上の距離、本人すら気付かぬ内に涼人から離れていた。それがなぜなのか本人すら分からない。確かな事は、この瞬間においては和人は間違いなく、人間としての理性よりも、動物としての危険察知能力に従ったと言う事くらいだろうか。
しかしそんな変化も、半ば錯乱状態の須郷には分からない。

「死ね!小僧ォ!!」
「…………」
須郷は思い切り涼人に近寄ると、胸の中心に向かって手に持ったサバイバルナイフを突き出す。最早その瞳はナイフの切っ先しか見ておらず、その先端が肉体に刺さる瞬間を待ち望むかのように爛々と輝いていた。
それはある意味で、幸運な事だっただろう。何故なら──

────

何かが切れる音などしなかった。
何の前触れすら、彼には感じ取れなかった。

それはそうだ。

切れるべきものは、もうとっくの昔に切れていたのだから。

────

それが一瞬だった事は間違いない。

右手に持って突き出された腕を、リョウは軽く体を横にずらして躱す。そのままその腕を、脇の下に挟んで、手首から先だけが自分の体の後ろに出るようにする。
咄嗟に須郷は手首の動きだけで涼人を刺そうと思考したが。それを行うよりも先に、頭上に髪を引っ張られたような強烈な痛みが走り、次の瞬間──

「ぎがっ!?」
「……」
涼人の右手に髪を持たれた。須郷の頭が、振りあげられた涼人の右ひざ蹴りに。思い切り叩きつけられた。
ベキッ!という鈍い音が、須郷の脳内に響く──鼻が折れた音だった。

「あぎっ……が……ぐ、ごの……」
顔面を蹴られ、ふらふらと数歩下がる須郷は自分の手に違和感を覚える。直ぐに分かった。今の衝撃で、ナイフを手放してしまったのだ。
慌てて探そう……として、今度は前に出したままだった右手が、何かに思い切り引っ張られ、須郷はつんのめるように、自分の体が左斜め前に出たのを自覚……した次の瞬間、首の後ろに強烈な衝撃が駆け抜けた。
仕組みは簡単だ。リョウが自分の左手で須郷の右手首をひっつかんで思い切り引き、その勢いを利用して須郷とすれ違いつつ一回転。右の肘鉄を、須郷の首の後ろに叩きこんだのだ。
頭と首に強烈な衝撃を受けた須郷は、視界を滅茶苦茶にしながら地面に突っ伏すように倒れる。
この時点で、須郷の混乱は最高潮に達していた。
頭をくらくらとさせながらも、とにかくナイフを……武器を拾おうと必死に
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