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万華鏡
プレリュードその四
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「こっちよ。こっちに来て」
「あっちは一体」
「あっちは大学なのよ」
「そうなんですか。あそこが」
「そう、八条大学よ」
 同じ学園だが大学で高校ではないというのだ。
「だからね。あっちには行かないで」
「はい、わかりました」
「向こうにあるのが校門だから」
 美女から見て左手にだった。大きなそれがあった。
「あそこを潜ればまた別の案内役がいるからね」
「そこに行けばいいんですね」
「そうよ。私は二年生でね」
 美女はくすりと笑って自分の事情も話した。
「今日は案内役に駆り出されてるのよ」
「それで今ここにおられるんですね」
「そうよ。まあどっちみち部活で今日は学校に来ることになってるし」
 案内役もいいというのだ。
「いてもね。ただね」
「ただ?」
「制服それにしたのね」
 美女は琴乃の制服、青のセーラー服を見て言ってきた。セーラー服のスカーフは赤、えんじ色の色映えのしているものだ。この組み合わせだった。
「中々可愛いわね」
「セーラー服好きなんで」
 これにしたとだ。琴乃は微笑んで答えた。
「古いかもって思いましたけれど」
「いいと思うわ。私はね」
「ブレザーですね」
「そう。黒でね」
 見ればブレザーは黒で腕のところに金のリングが二本ある。それがモールの様に袖のところで巻かれている様に光っている。
 ネクタイも黒でスカートは短いプリーツだ。そしてやはり黒のハイソックスをはいている。
 ブラウスは白で全体的に軍服を思わせる。その制服姿で言うのである。
「何て言われていると思うかしら」
「ええと。そう言われても」
「軍服みたいって言われてるのよ」
「軍服ですか」
「このリングあるじゃない」
 美女は右手を顔の高さであげて左手の人差し指で指し示しながら話した。
「これね」
「服の刺繍がですか」
「制服全体のデザインがそうだしね」
「特にその金モールですか」
「そうも呼ばれてるわ」
 呼び名はどうでもだ。とにかくそれがだというのだ。
「軍服みたいだってね」
「けれどブレザーですよね」
「それでも言われるのよ。私的には気に入ってるけれど」
「そうなんですか」
「おかしいでしょ。けれどこの学園はね」
「はい、制服はですね」
「何十種類もある中から上下それぞれ選べるからね」
 八条学園の特徴である。制服は一つではないのだ。
「それぞれ着られるのがいいのよね」
「そうですよね。それで私は」
「そのセーラー服にしたのね」
「はい、冬はこれにしました」
「夏はどれにしたのかしら」
「夏は下は青のままで」
 そのスカートだというのだ。やや短いそれを見ながらの言葉だ。
「上はライトブルーのブラウスにしました」
「それにしたのね」
「青が好きなんです」

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