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八条学園怪異譚
プレリュードその七

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「チビなのは悪いことしてるからだぞ」
「だから御前チビなんだよ」
「御前悪い娘だろ」
「悪い娘は学校に来るなよ」
 こんなことを愛実に言っていた。そして言われている愛実は。
 両手で目の涙を拭いてべそをかいていた。言われるままだった。
 その愛実に男の子達はさらに言う。だがだった。
 愛実と男の子達の前に聖花が来てだ。こう言った。
「あんた達何してるのよ」
「何だよ、御前」
「確か林田だったよな」
「一体何だよ」
「御前に関係ないだろ」
「関係あるよ」
 幼いながらも強い声でだ。聖花は彼等に言った。自分の背中に愛実を守りながら。
「愛実ちゃんをいじめること許さないから」
「だから御前に関係ないだろ」
「それで何で出て来たんだよ」
「勝手にでしゃばるなよ」
「どっか行けよ」
「絶対に行かないから」
 また言う聖花だった。その表情は強いものだった。
「愛実ちゃんは友達だから」
「友達?」
「だからだっていうのかよ」
「そうよ。愛実ちゃんは私の友達だから」 
 聖花はこう言って引かない。愛実の前から。
「いじめることは許さないから」
「おい、じゃあどうしてもかよ」
「俺達の前からどかないのかよ」
「そう言うのかよ」
「そうよ。あんた達が愛実ちゃんいじめるのならね」
 それならと言ってだ。愛実は意地でも引こうとしなかった。 
 そしてその彼女の言葉と強い顔を前にしてだ。男の子達は。
 互いに顔を見合わせた。そしてこう言うのだった。
「こんなのとやり合っても仕方ないよな」
「だよな。こんな生意気な女とな」
「じゃあいいか」
「別にいいか」
 こう言ってだ。そうしてだった。
 彼等は聖花と愛実にだ。こう言ったのだった。
「ふん、勝手にしろよ」
「精々仲良くしてろよ」
 言い捨ててそうしてだった。二人の前から去った。二人になるとだった。
 愛実はまだべそをかいていた。目が赤くなっている。だがその目でこう聖花に言ったのだった。
「有り難う、本当に」
「いいの」
 聖花はその愛実と向かい合ってだ。こう笑顔で言った。
「だって。愛実ちゃんがいじめられてるからね」
「だからなの」
「そうだよ。これからもね」
「これからも?」
「私愛実ちゃんがいじめられてたら絶対に来るから」
「それで助けてくれるの?」
「うん、そうするからね」
 べそをかいている愛実にだ。聖花は笑顔で告げた。
「だから安心してね」
「有り難う。それじゃあ私もね」
「愛実ちゃんも?」
「聖花ちゃんが困ってたらね」
 その時はだというのだ。
「私も何とかするから」
「そうしてくれるの?」
「だって。聖花ちゃん私を助けてくれたから」 
 だからだというのだ。
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