暁 〜小説投稿サイト〜
八条学園怪異譚
第九話 職員室前の鏡その五
[1/2]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話

「怖いなんてものじゃないから」
「確かに。鏡の向こうの世界って」
「魔界とかだったらね」
「地獄かも知れないわよね」
「地獄なんて生きたくないわよね」
「行きたい人いないでしょ」
 聖花はかるたを取りに左手を横に素早く動かした。しかしその前に愛実の手が一瞬早くその札を取っていた。
 愛実はその札を取ってからこう言うのだった。
「そうよね、やっぱり」
「ええ。魔界もね」
「誰でもそうよね」
「そう思うわ。それにしてもね」
「速かった?今の」
「愛実ちゃん最近特に腕あげてない?」
 話題はかるたのものにもなる。二人の部活のことに。
「今の見えなかったわよ」
「そうかしら」
「動きに無駄がなくなったっていうか」
 それで速くなったのではないかというのだ。
「それに迷いがなくなって」
「迷い、ね」
「そう。そんな感じだけれど」
 こう愛実に言うのだった。
「やっぱりそれって」
「心が晴れたからかしら」
「それでだと思うわ」
「そうよね。入学してから暫くね」
 どうだったかというのは愛実自身が最もよくわかっていた。
「嫌な気持ちだったから」
「それが変わったわよね」
「ええ、やっとね」
 そうなったっと聖花に答える。
「誰かを妬んだりしていると嫌な気持ちになるから」
「私もそうだったわ」
「けれどそれがなくなったから」
 それでだというのだ。
「多分そのせいよね」
「そうよね。愛実ちゃん最近ね」
「最近って?」
「先輩が言ってたらしいのよ」
 こうしたまた聞きだがだというのだ。
「愛実ちゃんを大会に出そうかってね」
「えっ、大会?」
「そう、学園内のだけれどね」
 八条学園は高等部だけでも複数の学科がある.二人が通っている商業科もまたその一つである。
「普通科、商業科、工業科、農業科にね」
「水産科と看護学科よね」
「そのそれぞれで開かれる大会だけれどね」
 それにどうかというのだ。
「出てもらおうかってね」
「そんな話になってるの」
「そう。凄いよね」
「ううん、一年の一学期でって」
 本当に入学したばかりだがそれでも大会に出てもらう、愛実にとっては想像もしていなかったことだった。
 それで信じられないという顔で聖花に顔を向けて尋ねた。
「信じられないけれど」
「そうよね。私もちらってお話聞いてね」
「信じられなかったのね」
「うん。一年の娘で愛実ちゃんだけよ」
「高等部の対抗大会に出られるのは」
「そう、だから若し出られたら」
「ええ、頑張るわ」
 そうするとだ。愛実は聖花に真剣な顔で頷いて応えた。
「全力を尽くすわ」
「ベストをよね」
「やるからにはね。正々堂々としてね」
「卑怯未練はかるたには禁物よね」
「昔からね」
 か
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ