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荒れ狂う狼(後編)
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 アマテラスとの戦闘開始から一時間が経過した。

 残るやつのHPは2本だけ。しかし奴は、もはや本来の姿からはかけ離れた存在となっていた。

「ガアアアア!!」
「ギュオオオ!!」
「キシャアア!!」
「ルオオオオ!!」


 本来の狼の頭、さらに右尾の龍頭、左尾の龍頭、中尾の龍頭・・・。合計で4つの頭を持つ異形の狼は、それぞれの頭で大きく息を吸い込んだ。

「来るぞ!!HPゲージがもうすぐ尽きそうになるとこの技を出すようになる。絶対に当たるな!!」

 ゲイザーが叫ぶ。恐らく、あのブレスには・・・。

「ぐっ!」

 俺の左手に、不快な感覚が走った。そこにあるのは、三十分ほど前に受け、いまだにエフェクトすら消えぬ、黄金の傷跡・・・。

 アマテラスの、特殊能力(アビリティ)。攻撃した相手に、効果時間《自分が死ぬまで》という凄まじい持続時間の、一分につき最大HPの1割を削る傷跡を残す。

 アマテラスの回転蹴り・噛みつき・噛みつき・噛みつき・爪振りおろし・再び回転、という大技を回避しきれず、受けてしまったのだ。
 
「セモン、気をつけろ。あいつの本気はこんなもんじゃない」
「わかってます。・・・絶対、勝つ」

 アマテラスの四つ首から、黄金のブレスが放たれる。

 思いっきり横に飛んで回避。凄まじい威力に、周りのエフェクトが歪んで見える。

「今だ、攻めるぞ!!」

 ゲイザーが叫ぶ。アマテラスは、大技を出すとかなり長い硬直時間を科せられるのだ。

「いくぞっ・・・!!・・・《マインドゲイジ・シュート》!!」

 ゲイザーの拳が光り輝き、同時に彼のHPゲージが一割ほど削れる。

 《流星拳》専用ソードスキル、《マインド・シュート》は、自分のHPと引き換えに威力をあげられる。そして《流星拳》のソードスキルには、ほかのスキルにはない絶対的なアドバンテージがあるのだ。それは・・・。
 
 密着状態から打つと、威力が倍になる。

「覇!!」
「ごああああっ!?」

 アマテラスが怒りの声を上げる。

「まだ終わってねえぞ!!」

 俺も刀を振る。もうかなりの回数のソードスキルを放っている。あくまでも予備。それに専用ソードスキルさえ使っていないが、《神話剣》の放つスキルは大幅に強化されているのだ。専用武器でなければ、耐えるのは難しい・・・。
 
 俺は、この刀があと数回のソードスキルの使用で砕けると判断した。そうなったら、もう《神話剣》は使えない。なら・・・

「砕ける前に、倒すッッ!!」
 
 片手剣ソードスキル《バーチカル・スクエア》。

 四連撃は次々アマテラスの横っ腹にヒットした。

「ぐおおおおお!!?」

 アマテラスが身悶える。

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