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くらいくらい電子の森に・・・
第六章 (1)
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始業30分前

今日は冬には珍しいほどにカラっとした晴天だった。何となく早めに教室に着いて、後ろから3番目の窓際の席に座る。結露で曇った窓越しに駐輪場が見える。そこに、僕の自転車がとめてある。…自転車使うほどの距離じゃないんだけど、今日は何となく早起きしてしまったので、何となくフレームを磨いてホイールに油をさした。
せっかくだから、何となく学校に自転車で乗りつけ、ちょっと目立つ場所に置いてみる。

しんしんと底冷えがする朝の教室で、窓越しにキレイになった愛車をぼんやり眺めながら、ずっと考えていた。

柚木が来たら、なんて声を掛けよう

昨晩は結局、何もまとまらないまま寝付いてしまった。
朝起きてそれに気がついたとき、軽くパニックに陥った。

安全パイは「よぅ」とか軽く声を掛けて、自分からはオムライスについて触れないことだと思うんだけど、それではなんというか…
上流から偶然岸に寄りついた希少な流木を「っそぃやぁ!!」とばかり流れに蹴り戻すようなものだ。

すごい男らしい絵ヅラだが、逃した流木は多分、大洋に放たれたっきり二度と河を遡上してこない……

かといって「オ、オムライス作ったよね!? 僕に作ってくれたよね!?」
とかオムライスを作ってくれた事実にがっつき過ぎても、「うわ、モテなそ……」とか言われてドン引きされそうだし……
突っ伏して頭を掻き毟る僕を、ちょっと見覚えのある学生が不審げに一瞥して通り過ぎる。携帯を見ると既に始業15分前。…伏し目がちにゆっくり室内を見渡す。真面目そうな学生が数人、前とも後ろともつかない位置の席に座っている。…柚木の姿はない。
 …始業5分前。もう学生もちらほら集まり始め、席の半数がうまっているのに、柚木は来ない。

こんな日に限って、ばっくれる気なのか……かるく凹んだ反面、なにか解放されたように清清しい。あのオムライスの一件は、僕の中の『謎の思い出BOX』に封印して、将来、万一、僕に彼女が出来て1年くらい経ったらそっと開けてみることにしよう…

 始業時間。田宮教授は少し遅れているようだ。柚木は、やっぱり来ない。……さっき感じた清清しさが、時を追うごとに濁り始めた。もう教授が来る前に、さっさと帰って布団かぶって寝てしまおうか…と思った矢先、ぺたり、ぺたり、としみったれたかんじのスリッパの音が近づいてきた。
「タミヤ来たぜ」
「…どんな材質だとあんな音がするんだろうな」
前に座っていた連中が話しているのを聞いて『ういろうじゃないか』とかいって話に加わろうかと一瞬迷ったけど、その話題はもう終わったようなので、黙ってノートを開いた。

ぺたり…ぺたり。スリッパの音が止まった瞬間

教室後ろのドアが開いて、誰かが飛び込んでくる気配がした。

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