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SAO─戦士達の物語
ALO編
六十一話 瞳開かず──
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しろ……

「怖えぇか?」
「はは……お見通し……か」
「まぁな」
 和人は、恐れて居た。
その先に進み、彼女の姿を目にする事を……何故なら……

「……」
 和人は尚も、止まる事無く歩を進める。と言うより、止まれないのだ。止まればその場で動けなくなる事は、本人にも分かっていたから。

 やがて突きあたりに、黄緑色の扉が見えて来る。
部屋の扉の横に付いた銀色ネームプレートには、結城明日奈 様 と書かれている。そのすぐ下のスリットに和人がパスを走らせ、電子音と共に扉が開く。
病室もやはり豪華な物で、室温は丁度良い温度に調整され、広く綺麗に掃除された部屋の中心には、飾られた綺麗な生花が爽やかな香りを振りまいている。
 しかし、今重要なのはそこでは無い。

 和人が、ゆっくりと奥のカーテンにしきられた一角に近付いて行く。しかし布に手を掛けた所で手は止まり、しばし何かを祈るように眼を閉じて……そっとカーテンを引く。
カーテンの向こうには、涼人や和人が眠っていたのと同型の介護ベッドがあり、そこに一人の少女が眠っていた。

 ……何故なら、また自分は現実に、絶望してしまうだろうから。

「久しぶりだな……」
 涼人の呟くような声の後に──

「アスナ……」
 和人の小さな、濡れた声が響いた。

────

 和人が明日奈の隣で俯き加減で座っている間ずっと、涼人は近くの椅子に座ったまま本を読み、一言も発せずに待っていた。
元々気まぐれな付添と、アスナの顔を見ておくのつもりで来ただけだったので特に急ぐ用事がある訳でもないし、何より今の和人に声をかけるべきでは無かった。
 幾度目かのパラリと紙をめくる音が部屋の中に響いた直後、ベットサイドの時計が正午を告げるアラームを小さな音で鳴らした。
顔を上げると、和人も時計に目を向け少し俯いた後、立ち上がる所だった。

「そろそろ帰るよ。アスナ、またすぐ来るから」
 そう言った和人に続き、涼人も持っていたハードカバーをショルダーバックに入れ、立ち上がる。と……病室のドアが背後で開く音がした。

『ん……?』
 見ると、二人の男性が部屋に入って来る所だった。
その先に入って来た方。ふくよかで有りながら何気に引き締まった体格の中年男性が、和人を見止めた瞬間顔を綻ばせた。

「おお、来ていたのか桐ヶ谷君。たびたびすまんね」
 その声を聞いてから、涼人はその顔に見覚えがあった事に気付く。以前結城家に付いて調べた時殆ど一番最初に見た顔。アスナの父親である結城彰三氏だ。
和人もすぐさまひょいっと頭を下げる。

「こんにちは、お邪魔しています。結城さん」
「いやいや、構わんよ。この子も喜ぶ。と……こちらは?」
 柔らかな笑顔でそう返した彰三氏は、涼人の方を見
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