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SAO─戦士達の物語
SAO編
二十九話 輝眼の悪魔と双刀の黒衣
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この二つが重なり、既に敗北寸前だった軍の部隊にとって、曲りなりにも指揮官たるコ―バッツの死亡は見事に最後のとどめとなった。

 戦線は瓦解し、軍の人間達は逃げ惑う。
この時点で、既にこの部隊は撤退すべきなのだが、走って逃げようとすれば間違いなく中央に居るボスモンスター《The Gleameyes》の餌食だし、性質の悪い事にこの部屋はボス部屋には珍しい《結晶無効化空間》(回復、解毒、転移等の、全ての結晶アイテムを無効化するプレイヤーにとって最も注意すべき空間トラップ)であったため、それすらもままならない。

 既に軍の全員がHPバーを半分を切っている中、キリトは必死に事態を収拾する方法を脳内で模索する。が、

「だめ……だめよ……もう……」
 喉の奥から思わず出て来た様と言った風なアスナの言葉に、キリトは意識を現実に引き戻され、咄嗟に彼女の腕を掴もうとした……しかし、一歩遅かった。

「だめ──────ッ!!」
 手が届くギリギリの所で、アスナは一気にグリームアイズに向かって駆け出す。

「アスナッ!」
「ええぃ……どうとでもなりやがれ!!」
 こうなってしまっては最早仕方が無い。
キリトも抜剣しながらアスナの後を追い、続いてクライン達も「オォォーーーーーー!!」と言うときの声と共に部屋の中へと突っ込む。

 キリト達の戦闘開始の初撃。
 アスナの捨て身とも言える突進攻撃は、此方とは逆方向を見ていたグリームアイズの背を捉えたが、体長三メートルを超えるであろう巨大な蒼い悪魔に対し、一撃の攻撃力を特化させたタイプでは無いアスナの攻撃は蚊が刺した程度なのだろう。
ろくにHPバーは減らず、むしろ悪魔の注意をこちらに引き付けただけの一撃になってしまう。

 自身を傷つけんとする愚かな乱入者に対し、部屋の主たる巨体の悪魔は怒りの声と共に向き直り、凄まじいスピードで斬馬刀の様な巨剣を振り下ろす。
それを何とかステップで横に回避したアスナはしかし、避けきる事は出来ずに余波によって地面に倒れ込む。
彼女の目の前にいる悪魔がその隙を逃そうはずも無い。
グリームアイズはもう一度振り上げた斬馬刀を情けも容赦も無く振り下し──

「アスナ────ッ!!」
 そこにギリギリのタイミングでキリトが飛び込み、手に持った愛剣《エリュシデータ》によって何とか攻撃軌道を逸らした。

「下がれ!!」
 後ろのアスナ達に向かって怒鳴りつつ、キリトは追撃に備えて剣を構え直す。
振われる悪魔の剣はその一撃一撃全てが圧倒的な威力を孕んでおり、反撃どころか距離を取る事すら難しい。

 人型でなおかつ武器を持つモンスターは原則として、プレイヤーと同じく剣技《ソードスキル》を使う事が出来る。
グリームアイズもその例に漏れず、両手大剣技を打ち出
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