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MUV-LUV/THE THIRD LEADER(旧題:遠田巧の挑戦)
13.任官
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なる。そのために富士教導隊のようなエースだけでなく、お前のように新しい感性を持っている新人や極々一般的な能力しか持たない衛士のデータも必要となる。そのためには通常の試験部隊とは別の部隊を作り、そこでデータを取るというわけだ。」
 戦術機の技術革新や概念の変化については巧も日米合同演習で思い知っていた。確かにこれまでの概念を覆すような能力差だった。新型の詳細は分からないが、もし帝国軍の主力がストライクイーグルの様な機体に代わるなら、代変わりは困難なものになると容易に想像できる。優秀な機体も衛士が使いこなせなければ宝の持ち腐れなのだ。
「なるほど……だから『特別試験中隊』なのですね。」
「そうだ、俺はそう聞いている。ただな…」
 それまでの口調とは変わって思案するように篠崎は続けた。
「この人事は胡散臭い…。特別試験中隊の任官先は決まっていないが、大陸派遣団とともに海外に行くと言われている。試験部隊が海外に行くなど聞いたことがない。」
「た、大陸派遣ですか!?ということは試験機で実戦をやる可能性があると?」
「そのことは公にされていないし、海外に行くというのも噂の域を出ない。しかし事実なら実戦だろうな。前線に戦力を遊ばせている余裕はない。通常勤務では基地内でデータ取りだろうが、緊急時には出撃することになるだろうな。」
「そんなことあり得るのですか…?試験機に新任を載せて実戦で使うなど正気の沙汰ではありませんよ!」
 試験機というものは机上で計算され、さまざまなシミュレーションを経て完成するものである。しかし実際に使わないと分からないトラブルが頻発するのが常である。それを様々な実機試験を経て取り除いていくのも開発衛士の重要な役目なのである。素の状態の試験機で実戦に出れば、敵軍の真ん中で予期せず機体が停止する可能性すらあるのである。無論そうなれば死ぬしかない。
「確かにな…だから胡散臭いんだ。だが軍とは時に理不尽な要求を軍人に課す。そして軍人はそれに従わなければならない。そして悲しいことはその要求が正しいとは限らないことだ。」
 巧は総戦技演習の時のことを思い出していた。田上が脱落した後、巧は指揮官として追撃してくる部隊を抑えるために隊員に殿を命じた。それが最善であったかどうかは別として、結果は合格。隊員たちの犠牲には総戦技演習合格の要因という価値がつけられた。
しかし今回の人事で仮に試験機で実戦に出たとき、試験機の不良で隊員たちが成す術なく死んでいったときそこにどんな価値があるのか。『試験機の不良が発見された』などという、犠牲を出さなくても分かったことを知るためだけの犠牲。それは無駄死にだ。
「さて、遠田少尉。お前には二つの選択肢がある。この辞令を受け入れ特別試験中隊に配属されるか、除隊申請を出して家に帰るか。」
 徴兵制が復活した今、
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