第１１１話 遼西の雄 後編
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「正宗様、丘力居が供を連れ訪ねてまいりました」
冥琳が陣幕に衛兵を数名連れ訪ねてきました。
とうとう待ち人が来ました。
「冥琳、丘力居を通してくれ」
「はっ、丘力居をここに通せ」
衛兵達は冥琳に命令を出されると拱手をして踵を返す足早に去っていきました。
「冥琳、丘力居はどのような人物だった？」
私は冥琳の丘力居の印象を尋ねました。
冥琳は少し考える素振りをした後、口を開きました。
「そうですね・・・・・・。なかなかしたたかそうな人物と見ました。今回の件にしても対応が早い。ですが、本当に丘力居に大守の座を与えるおつもりなのですか？」
冥琳は丘力居を有能な人物と言いつつも、彼女を重用することに抵抗があるようでした。
「異民族が大守になるのは気に入らないのか？」
「本音を申せばそうです。過去、異民族に官位を与えることがあっても、大守に据えるなど聞いたことがありません。幾ら東の果ての郡とは申せ。地理的にも我らに反旗を翻すことも可能です」
冥琳は私に真剣な表情に意見してきました。
「前例はないので、朝廷に上奏するとき支障が出ると思っている。その対策として、丘力居には漢式の名を与えるつもりだ。中央の老いぼれ共は辺境の郡大守が誰等興味などない。私は私の息の掛かった者が彼の地を治めればいいと思っている」
私は遼東郡経由で海路より硫黄を運ばせるつもりです。
火薬の材料には不可欠な物です。
その対価に彼らには食料と私が後ろ盾となり彼らの自治を保証してやるつもりです。
丘力居にも悪い話ではないでしょう。
「その点は正宗様のお考えに異論はございません。ですが、丘力居が大人しく、あなた様に臣従するとは思えません」
「一時だけ遼東郡を丘力居に任せるだけだ。ことが済めば、場合によってはその地位は返上してもらう」
私は一物有りげに冥琳を見据えて言いました。
「どういう意味です？」
冥琳は私を訝しげな表情で見て言いました。
「私が中原を制した後に丘力居が私に叛意あれば誅殺する。それまでは北方に巣食う異民族の防波堤となって貰う。彼女もやっと手に入れた安寧の地を奪われるなどさせぬだろう。必死にあの地を死守するために奮闘してくれるだろう」
私は厳しい表情で冥琳を見ました。
「丘力居を捨て駒にするおつもりですか？」
冥琳は私の真意を探るように訪ねてきました。
「それは丘力居の出方次第。私
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