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髑髏天使
第十一話 死神その三
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「何ならな」
「馬鹿言わないでよ」
 若奈はその言葉を聞いて呆れた顔になった。
「仕舞いに体力なくなるわよ、本当に」
「闘いではそうも言ってはいられない」
 牧村はその言葉に不意に闘いという単語を出してきた。
「その場合にはな」
「闘い!?」
 若奈はその闘いと言う言葉に眉を顰めさせた。
「今闘いって言わなかった?」
「言ったが」
「テニス部なのに闘い!?」
 彼は今テニス部の活動に参加している。若奈もいるその部活だ。当然ながら闘いとは全く無縁の世界だ。それで闘いという言葉を出すからいぶかしむのだった。
「何よ、それ」
「何でもない」
 これについては特に答えない牧村だった。
「それはな」
「闘いが何でもないって」
「何でもない」
 彼はあえて言うのだった。
「俺だけのことだ」
「まあ試合を闘いだって考えてるのならそれでいいけれど」
 若奈は話しているうちにそう考えたのだった。
「けれど。それだけの速さだったら肝心な時にばてるわよ」
「アフターケアはしているがな」
 牧村はそれは忘れていないというのだった。
「身体はほぐしているし栄養も摂っている」
「だったらいいけれど」
「まずは二十キロだ」
 ランニングの距離である。
「走るのはな」
「それから筋力トレーニングよね」
「ああ」
 若奈の言葉に対して答えた。
「いつも通りな」
「まずはランニングとそれなのね」
「基本だろう?」
 今度は素っ気無く返したのだった。
「それはな」
「まあ走るのも筋力トレーニングもね」
 このこと自体については若奈も反対することはなかった。
「どちらも。スポーツの基本中の基本だからね」
「だからやる」
 こう答えるのだった。
「今もな」
「けれど。それにしては速過ぎるのよ」
 ウォッチを覗きながらまた牧村にこのことを告げたのだった。
「本当に。異常よ」
「異常か?」
「これじゃあ競技よ」
 またこう言ったのだった。
「この速さ。凄いわよ」
「あえてそうしている」
「そうなの」
「とにかくだ」
 彼は相変わらず前を見据えたまま走っていた。その額には汗が流れ出ている。そこまで暑くはない季節だというのにそれでもだった。
「こうしないとな」
「駄目なの」
「走って体力を溜める」
「それだけ?」
「身体のキレもより強くさせていく」
 今度はこ答えたのだった。
「今よりもな。ずっとな」
「だから走るのね」
「そしてテニス自体もな」
 それもだった。
「これが終わったらする」
「本当に凄いなんてものじゃないわよ」
 テニスのことも忘れていないので若奈の言葉には呆れたものさえ含まれるようになった。
「ここまでやるなんて。尋常じゃないわ」
「そんなにか」

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