第九話 氷神その九
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「面白い催しを用意してきた」
「魔物か」
「そうだ。場所はこの学校・・・・・・というのか」
ウェンティゴは目だけで周りを見ながら述べた。
「ここにな。魔物を一人召喚しておいた」
「そうか。ここにだな」
「すぐにそちらにやって来る」
また牧村に目を向けてきた。
「貴様のところにな。楽しみにしておけ」
「楽しみか」
「そうだ。貴様は確かにいい髑髏天使だ」
楽しんでいる言葉が続く。
「このままいけば。やがては」
「やがて？」
「いや、今は言わないでおこう」
言おうとしたところで言葉を止めてみせてきたウェンティゴであった。ここでも楽しんでいるのがわかる。しかし今のは何に対して楽しんでいるのかは牧村にとってはわからないことであった。
「これからの為にな」
「そうか」
そう言われても動じはしない牧村だった。
「ならばいい」
「その泰然自若というのか」
牧村のぶしつけとも言っていい態度を見ての言葉だった。
「そのスタイルもまたいい」
「別にこれについてどうも思ったこともない」
「そうか」
「そうだ。そして貴様の言いたいことは言い終わったか」
「一応はな」
またここでも不敵な笑みを浮かべてきた。
「以上だ。それではだ」
「わかった。しかしだ」
「むっ！？」
「一つ言っておく」
牧村は前に進みその場を去ろうとする彼に対して言ったのだった。すれ違いざまにその言葉で囁く。言葉は相手の耳の間近で入った。
「何だ？」
「俺は敗れはしない」
言うのはこのことだった。
「それはよく覚えておくことだ」
「敗れないのなら敗れないでいい」
だがその言葉を聞いてもウェンティゴの言葉にある不敵な笑みは変わらないのだった。
「それでな」
「どういうことだ？それは」
「いずれわかる」
ここでも言おうとはしなかった。
「いずれな」
「いずれか」
「その時に貴様も知ることになるだろう」
不敵な笑みはそのまま不敵な言葉になっていた。
「髑髏天使のこともな。さらに」
「さらにだと」
「そうだ。その時に貴様が何と思うか」
言葉には笑みがあった。今度は未来を見透かしたような、そうした笑みであった。
「楽しみにしている」
「戯言か」
その言葉を聞いても言い捨てる牧村だった。
「所詮は」
「そう思いたいなら思うことだ」
ウェンティゴの言葉の調子は変わらない。
「それではだ。また会おう」
「ふん」
「その時に貴様が今よりさらに強く」
言葉をここで終わらせてはこなかった。
「そして。より髑髏天使になっていることを望む」
「俺が髑髏天使に」
その言葉には引っ掛かるものを感じた。しかし相手を見るより前に彼はもう姿を消してしまっていた。廊下に残っているのは牧村だけ
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