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銀河英雄伝説〜その海賊は銀河を駆け抜ける
第十四話 覇者と商人
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ルヌさんもワインを飲みながら何かを思っている。多分黒姫の事だろう。
「先輩、黒姫とフェザーンとの関係はどうなんでしょう」
「悪い」
一言だった。余りの断定振りに思わずヤン提督と顔を見合わせ笑ってしまった。キャゼルヌさんも一緒に笑っている。

「フェザーンにとっては中継貿易の独占を崩されたんだからな、面白くは無いさ。それに彼らは実際に被害も受けている」
「被害?」
僕が問いかけるとキャゼルヌさんが頷いた。

「フェザーンを介して帝国の物産を買う事が有るんだが以前に比べると安くなったんだ。連中、かなり儲けていたようだな。だが今では黒姫が安く提供してくれるからな、フェザーンも価格を下げざるを得ない。おそらく同盟から帝国に持っていく物も同様だろう」
「というと黒姫は商人としては良心的ですか」
ヤン提督が問いかけるとキャゼルヌさんが苦笑した。

「俺にはそう見えるんだがフェザーン人によると黒姫は阿漕で血も涙もない奴、という事になる」
「はあ、……商人としてフェザーン人にそう言われるのは褒め言葉なんですかねぇ」
ヤン提督が頭を掻いている。なんか可笑しくて笑ってしまった。キャゼルヌさんも笑っている。

「黒姫が組織の長になった時、彼の組織は誰も気にかけない様な小さな組織だった。だが僅か数年で帝国でも指折りの組織に拡大したんだ。尋常な手段では難しいだろうな」
「犯罪に関わったという事ですか」
キャゼルヌさんが小首を傾げている。“どうかな”と呟いた。

「噂は色々と有るんだが確証は無い様だ。誹謗、中傷の類と言う事も有るだろう。ただ、……貴族の相続争いや反乱が起きた時には必ず黒姫の影が有ると言われている。その騒乱を利用して巨大な利益を得てきたらしい。……黒姫が動く時は貴族が死ぬ、黒姫は死の使い……、フェザーン人はそう言って怖気を振るっているよ。怖い話だよな」
「……」

「帝国には黒姫一家以外にも海賊組織が有るんだが黒姫一家は他の海賊組織から一目も二目も置かれているらしい。その中には本当の海賊も居る。フェザーン商人だけじゃない、海賊達からも黒姫は恐れられているのさ……。俺もその恐ろしさは分かっている」
キャゼルヌさんが溜息を吐いた。

「そうですね、私も彼を恐ろしいと思います。彼とローエングラム公、一体どんな事を考えるのか……」
今度はヤン提督が溜息を吐いた。

何時の間にか食事は終わっていた。美味しかったはずだけど今一つ良く覚えていない、そんな食事だった……。




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