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リリカルってなんですか?
無印編
第二十二話
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ろでそのタイミングを見計らっていたようにこつこつと足音を立てて誰かが奥からこちらに向かってきているのが分かった。

 足音がする方向に視線を向けていると、やがて影の中から姿を現したのは、僕も見覚えがある姿だった。

 全体を黒を基調としたドレスのような服に包まれた紫の髪の毛を肩先まで伸ばした女性。忘れられるはずもない。僕を攫った本人なのだから。そんな彼女は、影から姿を現したかと思うと、起きている僕を一瞥して、意外そうな口調で口を開いた。

「あら、もう起きていたのね」

 その言葉に僕はどんな返事をすればいいのか思いつかなかった。そもそも、彼女は、僕にとって見れば誘拐犯なのだ。そんな彼女から声をかけられて軽々しく返事ができるわけがないし、そこまで神経が図太いわけがない。しかしながら、アリシアちゃんにあんなことを言った彼女に怯えた顔を見せるのも癪だったので、僕にできた反抗は、彼女を睨みつけるぐらいだった。

 もっとも、彼女からしてみれば、子どもの戯言に近いことだったのだろう。僕が睨みつけたところで、彼女は特に反応した様子もなく、少し興味深げに僕を見た後、周りにあるシリンダーのようなものを一つ一つ点検するように見ていた。

 彼女の後姿を見ながら僕は考える。彼女の目的は何だろうか? 目的は僕のようだが、魔法を使うことを考えると、管理世界側の関係者なのだろう。ならば、管理外世界の住民である僕の重要度など低いはずだ。だから、僕には彼女の目的が分からなかった。いや、そもそも、彼女は誰なのだろうか。アルフさんの知り合いであろうことは伺える。そして、アルフさんが口にした糞婆という罵るような口調。

 ああ、そうか、と僕はアルフさんが、そんな口調で罵る唯一の相手を思い出した。

 ―――プレシア・テスタロッサ。

 アリシアちゃんの本当の母さんだ。

 アルフさんがあんなふうに嫌悪丸出しで叫ぶのは、プレシアさんぐらいしか思いつかない。アリシアちゃんと始めてであった日に事情を話してくれたアルフさんから考えてもおそらく間違いないと思う。あの時、アルフさんはアリシアちゃんに何か悲しいことがあって、絶望していたというが、僕が攫われる直前のようなことを慕っていた母親から言われれば、ショックも受けようというもの。

 しかし、そうなると、よくわからないのが、プレシアさんが口にした言葉だ。

 アリシアになれなかった、人形でもない、ゴミ。それらの言葉はすべてアリシアちゃんを保護した日の夜に最初に彼女が否定していた言葉だ。ならば、それらがプレシアさんから投げつけられたのは間違いないだろう。しかし、分からないのは、その原因だ。

 アリシアになれなかったとはどういう意味なのだろうか? 人形すらなれなかったとは?

 プレシアさんの言葉
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