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Dies irae~Apocalypsis serpens~(旧:影は黄金の腹心で水銀の親友)
第二十五話 喜悲劇への前座
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彼を睨みつける。だがラインハルトはその視線を気にすることなどなく言葉を続ける。

「心外だな。私は女子供に責任を果たさぬような男ではない。現に私は妻であったリナに対して誠実さを見せていたつもりだ。だからこそもう一度言う、知らん」

馬鹿な、と愕然とした気持ちで玲愛は言葉を詰まらせてしまう。するとラインハルトは笑い出した。

「そうなると不思議だな。考えたことは無かったがアレの父は誰なのだろうな?カールにはその手の機能があるとも思えん。ゲッベルスやカナリス、ヒムラ、ヴェルナー、シェレンベルグ辺りか?いやないな。その手の相手に事欠くことは無くともアレは出来ん。意外にナウヨックスやも知れんな。まあそれは有り得んだろうが。
ふむ、こう考えては如何だ?少しばかり夢のある推理だ。そもそも父親などいなかった。マリアの子に父などおるまい」

声を出さないでいられたのが不思議だった。破壊的なその気配に潰されそうになりながらも辛うじて耐え忍ぶ。

「時間だ。中々に有意義な会話であったよ。次にあうのは総てが終わったときであろうな。まあ、その時までにもう少しましな解を考えておくことにするよ」

既に呼び止める力など無く、ナウヨックスが用意した席に座り続けたまま意識を手放さずにいることしか彼女には出来なかった。




******



―――諏訪原タワーパノラマ展望台―――

「親衛隊は敵地を進み、 そして悪魔の唄を歌う(SS marschiert in Feindesland Und singt ein Teufelslied )
狙撃兵はオーデルの河畔に立ち、 微かに口遊むのだ(Ein Sch?tze steht am Oderstrand Und leise summt er mit )
我らはどこでも口笛を吹く(Wir pfeifen auf Unten und Oben )
全世界が我らを 呪い、また称えようと 一抹の慰みに過ぎないのだから(Und uns kann die ganze Welt Verfluchen oder auch loben, Grad wie es ihr wohl gef?llt)」

僕は珍しく上機嫌になり軍歌を口ずさみながら窓越しに外を見る。上へと目を向けると高度で緻密で大胆で繊細でそれこそ術師本人であるメルクリウスやそれと同等レベルの人間にしか手を出すことの出来ないであろう魔方陣が目に映る。
逆に下へ目を向ければライトアップされ本来ならば恋人や友人、家族で過ごすであろうこの時期の夜にもかかわらず人の気配はほぼ総て絶えている。残っているのは学校で敗戦を噛み締めている蓮君達と唯一、一人だけ勝ち残ったヴィルヘルム、そして僕自身とその周りにいる七人の皇帝だったモノ達のうち僅かに残り僕の
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